伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  日本映画界で類稀な奇才ぶりを発揮したのが、伊丹十三監督(1933~1997没、享年64才、不審死)です。 警察は、死因を‘飛び降り自殺’と発表しましたが、私は、間違いなく暴力団による暗殺と思っています。
















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http://cmovieshd.com/movie/tampopo/watch/

http://blog.oisiso.com/2012/06/post-938.html

映画『タンポポ』よりラーメンに関する部分のまとめ

たんぽぽらーめん

ある晴れた日、僕は一人の老人にともなわれてふらりと町へ出た。 老人はラーメン暦四十年。 これから僕に、ラーメンの正しい食べ方を伝授してくれるのだという。

僕:「先生、最初は、スープからでしょうか、それとも麺からでしょうか?」

老人:「最初はまず、ラーメンをよく見ます」

僕:「は、はい」

老人:「どんぶりの全容を、ラーメンの湯気を吸い込みながら、じみじみ鑑賞してください。 スープの表面にキラキラと浮かぶ無数の油の玉。 油に濡れて光るシナチク。 早くも黒々と湿り始めた海苔。 浮きつ沈みつしている輪切りのネギたち。 そして何よりも、これらの具の主役でありながら、ひっそりとひかえめにその身を沈めている三枚の焼き豚」

老人:「ではまず箸の先でですね、ラーメンの表面をならすというかなでるというかそういう動作をしてください」

僕:「これはどういう意味でしょうか?」

老人:「ラーメンに対する愛情の表現です」

僕:「ははぁー」

老人:「次に、箸の先を焼き豚のほうに向けてください」

僕:「ははぁーいきなり焼き豚から食べるわけですか?」

老人:「いやいや、この段階では触るだけです。 箸の先で焼き豚をいとおしむようにつつき、おもむろにつまみあげ、どんぶり右上方の位置に沈ませ加減に安置するのです。 そして、これが大切なところですが、この際心の中で詫びるようにつぶやいてほしいのです。 『あとでね』と」

ガン(渡辺謙):「なにが『あとでね』だよ。 ちくしょう、ひでえもんだな、こっちまでラーメン食いたくなってきちゃったじゃねーかよぉ」

ゴロー(山崎努):「まあガマンしろよ、あと二時間で着くじゃねえか、仕事終わってからゆっくり食いに行こうや」

ガン:「そーおー?」

ゴロー:「それより続き読みな」


老人:「さて、それではいよいよ麺から食べ始めます。 あ、このときですね、麺はすすりつつも、目はあくまでもしっかりと右上方の焼き豚に注いでおいてください。 それも、愛情のこもった視線を」

やがて老人は、シナチクを一本口中に投じてしばし味わい、それを飲み込むと、今度は麺をひとくち、そしてその麺がまだ口中にあるうちに、またシナチクを一本口中に投じる。ここではじめて老人はスープをすすった。 立て続けに合計三回。 それからおもむろに体をおこし、フーッとためいきをついた。 意を決したかのごとく、一枚目の焼き豚をつまみあげ、どんぶりの内壁にトーン、トーンと軽くたたきつけた。

僕:「先生、今の動作の意味は?」

老人:「なに、おつゆを切っただけです」

タンポポのラーメン

タンポポ(宮本信子):「そんなにヒドかったですか私のラーメン」

ゴロー:「いやあ、そういう意味で言ったんじゃないんだよ」

タンポポ:「お願いです正直に言ってください。 主人が亡くなってから私、見よう見まねでやってるんですけど、ぜんぜん自信がなくて、すごく不安なんです。 是非、お二人の意見聞かせてください。 どうでしょう、わたしのラーメン。

ゴロー:「うーんそうだねえ、まあ、まじめな味ではあるんだけど、元気がないというか、力がないというか」

ガン:「はっきりいってマズいです」

ラーメン屋の心がけ
•いらっしゃいを言うなら客の顔を見て言う。 さもなきゃ黙々と仕事をする。
•客が見てない時にすばやく客を観察する。 急いでいるのか腹が減っているのか、この店ははじめてか、ふらっと入ってきたのか、ウワサを聞いて来たのか、酒飲んだ後か、この店のラーメンに合うか。
•チャーシューをその場で切るのは良い事。 しかし厚けりゃいいというものではない。 2ミリ~3ミリにする。
•丼を渡す際も客の顔を見る。
•スープがすぐに飲めるのはおかしい。 熱くないラーメンはラーメンじゃない。
•旨いラーメンさえつくりゃ、客なんていくらでもいるわけだ。

悪いラーメン屋

動きに無駄が多い。 私語が多くて誰が注文したのかもわかんない。

スープは煮過ぎて豚骨の臭みが出ていて、豚の臭いを消すために入れた野菜も甘みが出すぎて嫌味。 丸みを出すための昆布もクドい。 背黒イワシはハラワタが臭くてラーメンスープには向かない。

麺は寝かせすぎてカンスイが芯まで染み込んでいて、食べるとカンスイの臭いがする。 雨の後はカンスイは少なめでよい。 チャーシューを茹ですぎてボール紙みたいな食感になっている。 シナチクは塩漬けでなく水煮を使っているから歯ごたえも風味もいまひとつ。

ラーメン食べるのはド素人。 素人にわからない味を作ってどうする。

良いラーメン屋

動きに無駄がなく、無言。 気合が客に伝わる。 客がどんぶりを離さない。 客が立つと、必ずどんぶりを見る。 スープはラーメンの命であり、ちゃんとスープを飲んでくれたかどうかを確認する。 客の細かいオーダーを全部覚える。

新生タンポポへ

味の基本線は綺麗に澄んだ醤油味のスープで、コッテリした迫力のあるコクを狙う。 具はチャーシューとシナチクとネギだけ。 メニューもラーメンとチャーシュー麺の二品で勝負する。

センセイ(加藤嘉)によるスープの指導

「いいですか、ラーメンというものは面白いもので、いい仕事をすればそれは必ずいい味になって帰ってきます。 これ忘れんでください」

「ではその、スープのイロハからおさらいします。 鶏はすぐに痛みますから新しい鶏をできるだけ早く使う。 鶏も豚も臭いが強いから一度熱湯で茹でて、あとよく水洗いをしてそれから使う。 野菜は丸ごと入れていいんです。 難しいのは火加減です」

「ダシができるためには十分強い火で、しかしくれぐれもこのようにグラグラ煮立たせんように。 煮立たせるとスープが濁ってしまいますからね。 そして何より大切なことは丹念にアクをとること」

ショーヘイ(桜金造)による麺のアップグレード

「ツルツルのシコシコでっしゃろ」

「麺っつうのはね、注文するときに厳密にレシピを決めて粉の配分から打ち方から全部指定せなあきまへんのや。 たとえばね、このトゥルトゥルするんは機械で生地を伸ばす時に一回ぐらい余分に圧延をかけてるんやないかなあと思うんですわ。 それに機械にかける前に生地の状態でしばらく寝かせてますね。 ただ、それをどの程度やってるのかその加減がわかりまへんのや。 カンスイもね、普通使うてるのとちょっとちゃうかもしれんなあ」

ビスケン(安岡力也)のネギソバ

「そんな悲しい顔すんなよタンポポ。 お前今、旨いもの作ってんだろ。 旨いもん作ってる時はよ、もっと幸せそうな顔しろよ。」

「ようし、じゃあなあ、俺のとっておきのレパートリー教えてやるよ。 まずな、ネギをハスに切んな。 チャーシューは細切りだ。 それを軽―く炒めて、ラーメンの中央に乗っけて、胡麻油をひとたらし。

以上伊丹十三の名作『たんぽぽ』よりラーメンに関する部分をまとめてみた。 何度観ても、いや素晴らしい映画である。

http://npn.co.jp/article/detail/19073161/

【不朽の名作】麺選びの部分が描写されていない、その一点だけが残念なラーメン映画「タンポポ」


まにあっく 2015年07月31日 12時09分








【不朽の名作】麺選びの部分が描写されていない、その一点だけが残念なラーメン映画「タンポポ」

 ラーメンというのは、もはや食べ物である前に得体のしれない何かになっていないだろうか? しょうゆ、塩、味噌という基本系から、とんこつ系、つけ麺、魚介系、油そば、家系ラーメン、喜多方ラーメン 、二郎インスパイヤ系など、様々なものに細分化し、本来ならば、お手軽なジャンクフードであるはずのものを、大の大人が大真面目に評論している。作る側も食べる側も、どこか狂気めいた熱量を持っている人も多く、普段ラーメンにそれほど思い入れがない人にどこか近寄りがたくなっている部分も多い。そんなラーメンのことを大真面目に論議する人々が面白いと思い、約30年前に映画のメインテーマとしてしまった作品がある。それが、今回紹介する、伊丹十三監督の第2作目(別名義合わせると3作目)として1985年に放映された『タンポポ』だ。

 この作品のメインは宮本信子演じる未亡人・タンポポのラーメン屋を、山崎努演じるタンクローリー車運転手のゴローら、ラーメンのスペシャリストたちが立て直す話となっている。予告編などでは「ラーメンウエスタン」というキャッチコピーが目を引いたが、まさにその通りで、映画『シェーン』など、人種差別的描写を減らした頃のウエスタンのような構図で、痛快でかつ笑える内容となっている。

 ラーメンに関する解説はかなり詳細になされており、店主の立ち居振る舞いから、スープ、麺、内装といったラーメン屋に必要な各要素を、それぞれのスペシャリストが細かく改善点を語っていく。その様子は大真面目すぎて笑ってしまうほどだ。最初に問題となる、店主の立ち居振る舞いの時点で、行列が出来ていても動きに無駄のある店は不味い店、客が食べ終わった後にスープを全部飲んでるか、さり気なく確認する店はいい店など、いいラーメン屋というのはどういったものかというのを細かく解説しており、かなり入念に調べていたことがうかがえる。

 スープの研究では、人気店のゴミ箱をあさってスープの内容物を調べるなど、かなりエグい描写もある。さすがにやり過ぎの気もするが、ここまでやらないまでも、ライバル店を調べる店というのは結構あるのではないだろうか。筆者が学生時代にアルバイトしていた地元のラーメン屋でも、偵察のようなことはよくやっていた。その場合スープの様子を確認するために、店のカウンターに座る前に、メニューを探すフリをしてスープの鍋をチラ見したり、カウンターにのれんがかかっている場合は、ワザと顔を厨房に突き出して注文するなどだ。ちなみに、昔にバイトしていた所が、醤油ラーメンがメインだった影響で、自分自身がアンチとんこつ派的なところもあり、この映画のとんこつ批判はよくぞいってくれたという思いもある。劇中でもゴローが指摘していたが、基本的にとんこつは、鍋に豚骨を放り込んで野菜と火力高めで一緒に煮込めばそれっぽいものが出来てしまうこともあり、野菜や昆布の香りで豚の臭いを隠す店などが、人気店であっても多い。当たり外れがとてもデカイのだ。「『こだわり』とかいうくらいならアク抜きくらいしろよ、豚臭すぎる」と思った時が何度もある。特に最近は、味が濃ければいいという幻想のもと、とんこつベースに醤油や塩、魚介などを混ぜてくる店も多いので、ハズレ率が極端に高い気がする。

 さらに、麺の話になると、「かん水」という言葉が頻繁に出てくる。劇中ではさも知って当然のように説明もはぶかれているが、このかん水とは、ラーメン用の麺を作る時に使うアルカリ塩水溶液で、かん水の分量次第で麺のコシやのど越が大きく変わってくる。一般に低かん水であればあるほど伸びやすいが、スープの味に絡みやすい麺が出来るといわれており、高かん水であるほどコシの強い麺が出来あがる。各ラーメン屋の店主は、手打ちではない限り、自分の店スープに合う麺を業者に発注するのだが、この作品では尺の都合か、麺選びの部分が描写されていない、その一点だけは残念な部分だ。

 内装に関しては、安岡力也演じるヤクザまがいの土建屋、ビスケンが、女性であるタンポポの背丈に合うような設計を試みる。さらに、この時に客のカウンターのスペースがラーメンを食べるにしては狭いと指摘し、大幅リフォームをするのだが、ここもラーメン屋にとっては、かなり重要ではないだろうか。おそらく伊丹監督自身も、狭く設計しすぎな店舗などをよく見ていたのだろう。こういった職業ごとの仕事に関する細かい描写は、後の伊丹作品の『マルサの女』や、『ミンボーの女』などでも見ることが出来る。

 さて、長々と劇中のラーメンについて扱ったが、実はこの作品にはもうひとつの側面がある。本編の幕間に入る寸劇がそれだ。これらのシーンでは役所広司扮する白スーツの男を始め、様々な人物の食に関する小話が展開される。正直、全く本編と関係ないので不要だと思うのだが、これらのシーンでは、性(もしくは生)や死と食に関する話が展開されており、本編とはまた違う生々しい食物に関連したエロ描写が見られるので、見方によっては、かなり面白い話となってはいる。個人的にはイマイチ乗りきれなかった感はあるが、笑える部分もあり、延々同じようなノリで進む本編の箸休め的要素にはなるかもしれない。あと、これらのシーンには日本人の食に関する挑み方に対しての皮肉も描かれており、この辺りは、後の伊丹作品である『スーパーの女』に通じるものがあるかもしれない。

 この映画を見るならば、昼飯時か、夕飯時に終わるように合わせて見ることをオススメする。詳細なラーメントークを受けて、きっと「ラーメン食べよう」と思うはずだ。まあ、映画から30年後の現在は、さらにラーメンのジャンルが細分化し、競争も過熱したことで、作中のようなオーソドックスな醤油ラーメンを探すのが難しくなっているかもしれないが…。

(斎藤雅道=毎週金曜日に掲載)

http://yansue.exblog.jp/21689816/


伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第521話>


日本映画界で類稀な奇才ぶりを発揮したのが、伊丹十三監督(1933~1997没、享年64才、不審死)です。
警察は、死因を‘飛び降り自殺’と発表しましたが、私は、間違いなく暴力団による暗殺と思っています。

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生前の伊丹監督は、様々な分野に造詣深くマルチな才能を発揮しました。
1984年マルチ才能人の伊丹十三は、「お葬式」で長編映画監督デビュー、その年の映画賞を総ナメにしa0212807_282536.png大ヒット映画になりました。
翌年の1985年、伊丹監督が、第2作目の作品として発表したのは、異色作「たんぽぽ」という‘ラーメンウエスタン’で、そのユーモア精神とパロディならびにギャグ満載のコメディ映画でした。
イタリア映画のマカロニウエスタンを元ネタに伊丹監督らしいマニヤックな演出で国内外の映画ファンを唸らせましたが、映画興行a0212807_291041.jpgとしては、成功しませんでした。
しかし、海外の映画ファンには、大好評で、とくにアメリカでは、日本映画としての興行成績が、歴代第2位という大ヒットでした。
この「タンポポ」を見たのが、きっかけで日本に興味を覚え来日する、実際東京でラーメン店を開く外国人もいたくらい大きな海外の反響でした。
アメリカの映画監督ジョン・ファヴロー(1966~ 俳優・プロデューサー)は、「たんぽぽ」からインスピレーションをa0212807_2114277.jpg得て新作を自主制作し映画「シェフ」を発表しました。
映画の本筋は、街の片隅にある寂れたラーメン屋にふらりと立ち寄ったタンクローリーの運転手(山崎努 1936~)と相棒(渡辺謙 1959~)が、女主人(宮本信子 1945~)を助け街一番のラーメン屋にして立ち去っていくというベタなストーリーながら、本筋と関係なく‘食のエピソード’のa0212807_2132132.jpgシークエンスを唐突に挿入、その斬新な構成と伊丹監督の自由自在な演出にただ脱帽です。
映画のエピソードをいくつか紹介すると、まず映画冒頭に登場する白服の男(役所広司 1956~)と情婦(黒田福美 1956~)の「食と性」で二人のエロチックなシーンは、口移しで生卵の黄身を崩さず何度もやりとりするカットなどポルノ真っ青なシーa0212807_214633.jpgンです。
海辺の若い海女(洞口依子 1965~)から買った生牡蠣を食べ、牡蠣殻で切った唇の血をその若い海女が唇を舐めるようにキスするシーンもエロチックです。
ラーメンの由緒正しい食べ方を教える老人(大友柳太朗 1912~1985)が、登場したり、高級レストランでスパゲッティの食べ方マナーを生徒に講義する先生(岡田茉莉a0212807_2144371.jpg子 1933~)の傍らでズズズッー、ズズズッーとスパゲッティを啜(すす)って食べる外国人(アンドレ・ルコント 1932~1999、「ルコント」オーナーパティシエ)いたり、顧客接待でフランス語メニューの読めない顧客と上司が、当たり障りのない料理や安いワインを注文するのに、フランス語は読めるが、空気の読めない新米社員は、高級料理や高級ワインを次々にオーダーするシーンなどゲラゲラ笑えます。
a0212807_2152556.jpg食の細いラーメン屋の息子にホームレスのシェフが、リストラされたレストランに夜忍び込み本物のオムライス(伊丹監督発案のレシピで現在このオムライスは日本橋「たいめいけん」の名物メニュー)を作って食べさせるシーン、アイスクリームをじっと見ている自然食だけの子供にタンクローリーの運転手が、自分のアイスクリームをあげるシーン、食品店の柔らかい商品だけ触り回る老婆(原泉 1905~1989)とそa0212807_216870.jpgれを見張る店長(津川雅彦 1940~)との追っかけっこ、有名大学教授を装うスリに北京ダックを奢(おご)りニセ投資話で騙そうとする詐欺師のエピソード、幼い子供たちを抱える男が、危篤の妻にどう声をかけて良いか分からずチャーハンを作らせるシーンなど悲喜交々のエピソードが、本筋に13話挿入されます。
a0212807_2164933.jpg映画のラスト‥クレジットロールの背景に映し出される「授乳」が、人間にとって最初の食事であり、これこそが、食の原点であるという伊丹監督のメッセージと私は、受け取りました。
エキストラと思われる公園で授乳する母親と赤ん坊の名前もちゃんと出演者クレジットにあり、さすが伊丹監督とその細やかな気配りに感心しました。
映画のサウンドトラックにさり気なくリストやマーラーを流す音楽センスもいいですねえ。
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