兵隊やくざ 川西玲子の『兵隊やくざ』評は残念ながらピントのずれたものになっている。この第1作は有馬頼義の原作にあるエピソードをほとんど採用しているから、増村の近代性を指摘するのではなく、有馬や脚本家の菊島をまず評価しなければならない。慰安所の描写も原作ではもっと踏み込んだもので、女性にとっては映画以上に噴飯ものである。しかし、それが実態だったのだ。『兵隊やくざ』シリーズで描かれる慰安所の女性たちは内地へ帰っても希望なんか無い、流れた果ての満州だという言葉をよく話していて、それは決して肯定的に描かれているわけではない。1作目の音丸の不憫さは他の作品より大きいくらいである。それに、川西は『兵隊やくざ』の1作目しか見ていないようだ。慰安婦は従軍慰安婦が取りざたされる前から映画には当然のこととして描かれていた(鈴木清順監督『春婦伝』など)。「兵隊やくざ」の第3作には「ピーや」という隠語で呼ばれていた売春宿が前線にあったことが描かれている。


























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 勝新太郎  兵隊やくざ シリーズ              池田 博明 



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兵隊やくざ 続・兵隊やくざ 新・兵隊やくざ
兵隊やくざ 脱獄 兵隊やくざ 大脱走 兵隊やくざ 俺にまかせろ
兵隊やくざ 殴り込み 兵隊やくざ 強奪 新兵隊やくざ 火線




見た日と場所 作  品        感    想     (池田博明)
2010年1月6日


DVD 兵隊やくざ


大映
1965年
102分  「兵隊やくざ」第一作。製作・永田雅一、脚本・菊島隆三、監督・増村保造、撮影・小林節雄、音楽・山本直純。白黒映画。敵との戦闘はなく、兵隊どうしの制裁に明け暮れる、刑務所よりひどい関東軍の兵士たち。

 満州の荒野に野ざらしの白骨死体で映画は始まる。満州北部の孫呉(ソンゴ)で、軍隊嫌いのインテリ上等兵・有田(田村高廣)はやくざ出身の初年兵・大宮貴三郎(勝新)の教育係を命ぜられる。准尉(内田朝雄)の考えでは彼の扱いには頭がいいヤツが必要だ、柔よく剛を制すだと言う。
 歩兵の大宮は、威張り散らして初年兵を殴る砲兵たちと浴場で大ゲンカをした。有田は浴場で倒れている裸の男たちの中から大宮を探して逃がす。翌日、砲兵の黒金伍長(北城寿太郎)が敬礼をしなかったと難癖をつけて、大宮を呼び出す。もと拳闘部の黒金の制裁は激しい。三年兵の有田は黒金が二年兵だと知ると、軍隊では年季(メンコの数)がモノを言うんだと命令口調になり、上官でもないお前の大宮への暴力は決闘だ、決闘は禁止されている、したがって大宮がお前を殴り返しても文句は言えないと説明、大宮は反撃に転じ、黒金の指の骨を折り、満足いくまで殴る・蹴る。大宮を止めた有田は黒金に、転んでケガをしたと申告させ、指の骨は大宮を殴ったためだと言わせる。
 師団演習が始まった。70kgの軍装を背負い、三日の強行軍だ。大宮は歩くのは不得意らしく途中で落伍、有田が付き添って夜になってようやく露営地に追い付く。ひとりで丘に登った有田は近くに来ている砲兵の黒金に会ってしまう。軍曹に昇進していた黒金は有田に「おまえは敬礼をしたが、敬礼をしなかったといっても誰も見ていない」と制裁を加える。そして、「大宮に朝6時に来いと言え」と帰す。有田がひどく怪我をしているのを見て大宮は事態を察する。
 翌朝、有田は班長・阿部(仲村隆)に頼んで三年兵を集めてもらう。案の定、黒金は大宮を集団リンチで制裁。歩兵の三年兵が二年兵の砲兵を止め、大宮は再び黒金の腕を折る。
 この事件で内務班は外出禁止の処分を受けた。ところが、いつのまにか大宮がいない。無断で外出したのだ。准尉は脱走したのだと怒る。有田は大宮のことは自分に任せてくれる約束だと、連れ帰ることを約束する。
 大宮は将校専用の芸者屋で音丸(淡路恵子)のところにいた。大宮は、内地へ帰っても誰も待っていない、給料ももらえる軍隊のほうがいいと脱走説を笑い飛ばす。
 大宮の処分保留を訴える有田に准尉は「お前が制裁を加えろ。みんなへの見せしめだ」と命令。殴られたことはあっても人を殴ったことのない有田は、大宮を竹刀で一発殴っただけで止めて去ってしまう。その後、准尉のもとに制裁を受けましたと報告に行った大宮は血だらけだった。准尉はよくやったと有田を褒める。大宮はレンガで自分の顔を殴ったのだ。唖然とする有田に浪花節の一節をうなる大宮。二人の結びつきは強くなる。
 そうこうするうちに大宮は一等兵になった。日本軍はアッツ島で玉砕し、ソ連がドイツに勝利、戦局はきびしくなる。除隊を心待ちにしていた有田は阿部から、除隊と同時に自分たちは召集されることになったと聞く。
 やけ酒を飲んで帰った有田は、炊事班から制裁を受けた初年兵・野木が脱走したことを知る。捜しに出た歩兵たち。大宮の呼び声にこたえるかのように荒野に銃声が響く。野木は銃をくわえて自殺していた。大宮は自分の声が野木を自殺させたと悩む。軍隊では弱いヤツは生き残れないんだ、気にするなと有田。野木の死体を見に来た憲兵(成田三樹夫)に死体を侮辱された大宮は怒る。
 野木の通夜だと言って、「いろは」の音丸の元に来た二人だが、ちっとも気勢が上がらない。音丸は胸を病んで死んだ女がいたと慰安婦の死を語る。ヘソ酒を提案する音丸。ヘソ酒?大宮はヘソ酒を説明する。しかし、それでも元気が出ない。満期も除隊もありゃしない。不幸な人間たちのはかない遊びである。大宮は「野木をなぐったのは誰だ」と炊事班に殴りこみをかける。
 有田が様子を見に行くと、不思議にも大宮は殴った炊事班の連中と酒をくみかわしていた。有田は大宮に班長・石神軍曹(早川雄三)が炊事場での乱闘を抑止するための計略だと教え、いろはの班長のなじみの女・みどり(滝英子)から砂糖など石神の横流しの実態を聞く。有田が情報を収集して班に帰ると、既に大宮は炊事場に呼ばれた後で、外で集団リンチを受けていた。有田は石神に「砂糖の横流しを暴くぞ」と脅す。石神は大宮と一対一の勝負をすると言う。石神と大宮の決闘が始まる。分が悪くなった石神はドスを手にする。大宮は有田から短刀を受け取る。斬り合いの後、手からドスを叩き落として大宮は完全に石神を殴り倒す。滝英子は、予告編では客を取り合う場面があるが、本篇には無くなっている。
 慰問団のなかに、大宮の昔の浪花節の師匠(山茶花究)がいた。大宮は組の親分が死んだこと、自分の身代りで刑務所に入った男の家族が貧乏していることを聞き、師匠に金を渡す。家族に届けてやって欲しいと。
 突然、舞台から一個大隊を選抜し南方へ送ることになる。選抜メンバーのなかに大宮もいた、有田は准尉に抗議するが、「クズの兵隊を出すのが慣例だ」と受付けられない。挙句に「天皇陛下の命令だ」と来た。有田から様子を聞いた大宮は師匠になにかを頼んだ。翌日、部隊を去る慰問団。トラックのなかに女装した八束(やつか)がいた。八束とともに大宮もいない。有田は「やつは脱走しません」と断言して探しに出る。
 大宮は音丸のところにいた。音丸は「ここから北には日本の女は三人しかいないそうよ」。有田が部屋に来る。大宮は「この町が気に入っている。俺は南方へは行かない」と答え、突然有田を殴り倒す。有田が意識を回復すると、阿部は大宮が有田上等兵と喧嘩になり、たたきのめしたと中隊長に自首したと告げる。中隊長は「部隊の恥になるような兵士は出せん」と判断、大宮は営倉に入っていると言う。南方への兵士は出発してしまった。大宮の七日間の懲罰が明けた日に師団参謀がやって来た。全部隊に動員令が出たのだ。ソ連との戦争が始まる。もはや玉砕あるのみだ。
 有田は「この戦争はダメだ、バカな将校の命令で死にたくない」。大宮は「とうとうこの時が来た。上等兵どのを助ける機会を待っていたんです。逃げましょう。拳銃、弁当、支那服等を、二丁用意して下さい。迷っている場合じゃないぞ」と立場が逆転する。音丸は着物を用意して「あたしの分まで生きて下さい」と二人に渡す。
 部隊の出発の日には、大雪が降った。列車はハルピンを過ぎ、そろそろ新疆に着こうかというとき、二人は行動を開始。途中で出会った憲兵を殴り倒す。二人は機関士を殴って脅し、連結器を外させる。後ろの列車は停止してしまうが、しょっちゅう止まってばかりいたので、兵隊たちは気がつかない。
 汽車は走る。大宮は「支那は広い、ヨーロッパと地続きだ」と前向きである。仲間たちはその後、レイテ島で全員戦死した。

          映画川柳「関東軍 鉄拳制裁で 日が暮れる」飛蜘 

【参考書】有馬頼義原作『兵隊やくざ』(光人社NF文庫)の「貴三郎一代」「裸の街」「歩く」「公用腕章」「おんな」「冬将軍隷下」「臍酒」「告白」「白夜」「賭ける」を脚色。

 川西玲子『映画が語る昭和史』(ランダムハウス講談社、2008)より、「末期の中国戦線を舞台に、戦争と軍隊のばかばかしさを全く違う形で描いた、ユニークな映画を二本おすすめしたい。「独立愚連隊(1959)と「兵隊やくざ」(1965)である。・・・・こういう娯楽映画が人気を得ていたのは、戦争体験者が社会の中核だったからである。このような映画を観ることで、辛くてアホらしかった軍隊生活を思い出し、鬱憤を晴らしていたのではないだろうか。
 暴力が過剰である上、慰安所の場面は女性から見ると実に腹立たしい。それでも映画として面白いし、メッセージも伝わってくる。人間の持つ二つの側面、知性と肉体を有田と大宮に担わせたところが秀逸。こういうところが増村保造の近代性だろう。それにしてもちょっと危ない映画をうまくつくる監督だった」

 川西玲子の『兵隊やくざ』評は残念ながらピントのずれたものになっている。この第1作は有馬頼義の原作にあるエピソードをほとんど採用しているから、増村の近代性を指摘するのではなく、有馬や脚本家の菊島をまず評価しなければならない。慰安所の描写も原作ではもっと踏み込んだもので、女性にとっては映画以上に噴飯ものである。しかし、それが実態だったのだ。『兵隊やくざ』シリーズで描かれる慰安所の女性たちは内地へ帰っても希望なんか無い、流れた果ての満州だという言葉をよく話していて、それは決して肯定的に描かれているわけではない。1作目の音丸の不憫さは他の作品より大きいくらいである。それに、川西は『兵隊やくざ』の1作目しか見ていないようだ。慰安婦は従軍慰安婦が取りざたされる前から映画には当然のこととして描かれていた(鈴木清順監督『春婦伝』など)。「兵隊やくざ」の第3作には「ピーや」という隠語で呼ばれていた売春宿が前線にあったことが描かれている。

 【追記】NHKの新会長・籾井勝人が就任会見で「従軍慰安婦は戦争をしているどこの国にもあった」と発言。これに関連して、神奈川新聞論説・特報(2014年2月5日)は林博史関東学院大教授のコメントを掲載。第二次大戦中に限れば「慰安婦制度があったのは日本とドイツだけ」「一般の売春とは異なる」「慰安婦制度は軍が組織的に女性を集め、公然と管理・運営したもの。日本軍の場合は海外への輸送まで軍の船やトラックを使った」。戦前には公娼制度があったが、これも既に反対運動が起こっていた。「1930年代には国際連盟も問題視し、日本政府は公娼廃止に乗り出した。その動きに逆らって導入されたのが慰安婦制度で、その制度を軍が組織した。当時から売春が当たり前だったわけではない」「強制連行の有無を論点にすること自体が誤っている」と指摘している。

 『RESPECT田中徳三』(シネ・ヌーヴォ、2006)より、田中徳三いわく、
 “勝新太郎という人は、「小さいときのガキ大将が、そのまま大きくなった人間や」とよく言われていますが(笑)、まさに、この「兵隊やくざ」の大宮はね、勝そのものですね。一番勝さんらしいと思った。やっててね。だからある意味では大宮貴三郎は、勝本人そのものやね。・・・・・それから演出やってて感じたのは、いつもはわりあい勝ちゃんのアイデアってうるさいんだけどね(笑)。この「兵隊やくざ」に限って、勝ちゃんのいろいろなアイデアが、結構、面白かったですね。”

 伊藤桂一『兵隊たちの陸軍史』(新潮文庫、2008。もとは1969年、番町書房刊)より、
 “(兵隊だった)六年六カ月の間、兵隊としての私は、敵--である中国軍と戦った、という意識より、味方--である日本軍の階級差と戦ってきたのだ、という意識の方が、はるかに強かった。陰湿にして不当な権力主義に、古参兵がいかに悩まされたかは、五年か六年隊務についた者は身にしみてわかっているはずである”(p.24)。伊藤は、敗戦時、上海にいた。中国本土での兵隊の生活を記録した貴重な報告で、いわば実録『兵隊やくざ』に相当する。

2010年1月7日


DVD 続・兵隊やくざ


大映
1965年
91分  シリーズ第二作。前作で機関車で脱走を図った二人の続篇。脚本はこれ以降、舟橋和郎に変わった。監督・田中徳三。音楽・小杉太一郎、撮影・武田千吉郎。音楽や撮影は一定しないが、さすが大映で、どの作品も水準以上。田中徳三監督作品には、ところどころ、ゆるい息抜きやお笑いの場面がある。この作品では芦屋雁之助・小雁の登場場面がそれに当たる。
 第一作は有田上等兵の語りがところどころに入っていたが、この作品では途中から大宮の語りに代わる。映画の観客に話しかける形だが、この構成は成功しているとは言えない。物語を手早く進行させるためのその場しのぎの措置でしかなかった。
 機関車は途中の線路が爆破され脱線し、雪の荒野に投げだされる二人。ふと気がつくと美人の看護婦がいる。奉天の陸軍病院だ。二人ともなんとか命をとりとめたのだ。大宮は看護婦の緒方恭子(小山明子)に惚れる。
 憲兵伍長の取り調べがあったが、有田は大宮と二人で警備役として前に来たが、いつのまにか列車が離れてしまったのだと主張する。客車が離れたために、部隊は爆破を逃れて助かったわけだし、敵による損害を過少評価したい関東軍はこの事件を極秘扱いとする。やがて、原隊復帰・除隊のはずが、北支の4242部隊に転属を命ぜられる。退院直前に大宮は緒方恭子に「あなたの毛を下さい」と無心する。翌日、こっそり紙に包んだものを落として渡す恭子だった。大宮は小躍りして喜ぶ。
 二人は九龍関の隊長・多久島中尉(須賀不二男)の部隊に配属される。訓練という名目の苛酷な演習がある。
 大宮が一番風呂にこっそり入っていると、三中隊の軍曹たち(芦屋雁之助・小雁)がやって来る。勝手に大宮を上官と思い込み、背中を流したり・・・正体がわかる前に風呂場を出たものの、忘れ物から大宮は一等兵だということが分かってしまう。
 大宮は三中隊による制裁を受ける。有田が止めに入って、大宮は反撃。有田は三中隊の目をくらますために、大宮を乙官上がりの八木曹長(上野山功一)や岩波曹長(睦五郎)の当番兵に推す。当番兵は将校の生活係である。急に大宮のナレーションに変わる。八木と岩波の花札博打に加わり、金をもうける大宮。
 大宮は恭子宛てのラブレターの代筆を有田に頼む。岩波の相手で芸者・染子(水谷良重)が官舎に来る。裸の染子の背中を流したり、愛欲場面を隣室で聞かされたりした大宮ははね起きて慰安所へ駆けつける。夕食時間の後は下士官だけしか受け付けない規則だが、そんな規則は破るに限る。なじみの芸者と部屋に上がる。  
 翌日、木村初年兵が脱走する事件が起こる。岩波が捜索で外出中の官舎に、染子が八木曹長を訪ねてくる。染子は岩波を嫌っていて、八木が好きなのだった。驚く大宮。そこへ、木村を捕えたと岩波が帰って来て・・・ひと悶着。岩波は染子を「売春婦」よばわりする。押し入れに染子を匿った大宮は当番兵を首になってしまった。
 部隊はゲリラが潜む部落を攻めるが、既に村民は逃亡した後で、病人の老人と看病するクーニャンしか残っていなかった。隊長は老人を取り調べもせず、パーロだと決めつけ、初年兵に突き殺させろと命ずる。岩波曹長が初年兵に命ずると、有田が抗議する。パーロだという証拠が無い、老人はただの病人だ、国際法では捕虜は丁重に扱うべしと定められている、たった一人の無実な村人を殺して全中国人を敵に回すのは損なはずと。岩波は怒る、「おまえ、反軍思想だな。構わん、(初年兵に)殺れ!」。有田「(初年兵に)無謀な命令に従う必要はない!」。八木が仲裁に入り、隊長は命令を変更して、捕虜は納屋に監禁された。
 大宮は有田に感心するが、有田は「このままではすまないぞ」と警戒する。案の定、有田は黒住兵長(五味龍太郎)や古兵達に制裁を受ける。大宮は有田の仇打ちとばかりに黒住以下全員を相手に大げんか、隊長が命令したことを知って、大宮は八木のもとで隊長を糾弾する。しかし八木はそんなことをしたら有田の立場が悪くなる、制裁を受けたため有田は軍法会議を免れそうだと諭す。隊長がクーニャンを呼ぶ段取りをしているのを聞き、大宮は見張り番を殴り倒して、二人を逃がしてしまう。大宮はケガをして外で寝ている有田と一緒に星空を見上げる。静かな夜である。有田「軍隊がなければお前という男と出会うこともなかったな。お前は自然で自由な人間だ」。捕虜が逃げたと騒ぎになるが、間もなく初めての敵襲だ。戦闘の最中に岩波は背後から八木を撃つ。
 敵が去った後で、重営倉の懲罰をくらった有田、捕虜の見張りだった兵隊たちも重営倉の懲罰を受けた。食事を運ぶ大宮は東京大空襲があったという話をする。1945年3月である。有田は八木が背中から心臓を撃たれていると大宮に話す。撃ったのは八木と反目していた岩波だろう、岩波の拳銃の銃弾を調べる必要があると二人。大宮はきっと証拠を手に入れてみせると決意する。八木の死体は火葬に付された。官舎で霊を弔うからと岩波は大宮を呼ぶ。官舎に染子も呼ばれていた。染子は「帰る。誰にも惚れやしない。兵隊なんか大嫌いだ」と言うが、岩波は嫉妬で怒り、染子に「坊主になれ」と無理を言う。二人が争っている間に大宮は岩波の拳銃を取る。
 数日後、救護のトラックがぬかるみにはまったとの連絡が届く。救出に駆け付けた大宮らはトラックを押す。トラックから降りてきたのは緒方看護婦だった。張りきった大宮は一人でトラックを押し上げる(これはちょっと無理な、出来過ぎの逸話だ)。緒方看護婦は隊長に弟の四郎に会わせて欲しいと頼む。隊長は営倉に入っている四郎に会わせるには特別な配慮がいると勿体をつける。有田が営倉を出た。大宮は隊長が恭子を犯そうとするのを止め、隊長を殴り倒す。恭子を弟に会わせるものの、早くも手が回り、岩波や下士官たちに囲まれる二人。有田は軍法会議にかけると息巻く岩波に「おまえこそ軍法会議だ」と証拠の銃弾を示す。狼狽する岩波。暴れ回った二人は部屋から出て赤十字のトラックを奪い、緒方看護婦を営倉前で拾って逃走する。機銃もトラックにはあまり効果がなかった。
 途中で緒方看護婦を下して、二人が乗ったトラックは走り去った。

        映画川柳「上官の 理不尽な命に 従うな」飛蜘 

【参考書】『RESPECT田中徳三』(シネ・ヌーヴォ、2006)より、田中徳三いわく、
 “有馬さんの原作は一作目でほとんど使ってるんです。だからこの二作目って、完全にオリジナルなんです。”
2010年1月7日


DVD 新・兵隊やくざ

大映
1966年
85分  シリーズ第三作。脚本・舟橋和郎、監督・田中徳三。音楽・鏑木創、撮影・中川芳久。嵯峨三智子が出演しているので楽しみ。

 ガス欠で止まるトラック。トラックを捨てて歩く二人。突然、パーロ(中国人ゲリラ)たちに襲撃されるが、日本軍も来て銃撃戦となる。廃屋に隠れて難を逃れる。
 二人は斥候に出たところをパーロに襲撃されたと言い訳する。既に彼らのいた4242部隊は前線に出てしまった。新しい中隊に編入されたが、隼という異名をもつ鬼部隊だった。
 起床ラッパが鳴ったが、有田は腹痛、大宮は頭がおかしいと理由をつけて練兵をズル休み。そこへ古参兵が来て治療と称して大宮を殴る。途中から大宮が反撃。分隊全員がケガをして、練兵休になった。どうせ休みだと風呂に行く大宮。有田は憲兵が見回りに来たのを見て、便所へ立つ。そのまま有田は風呂で裸の大宮に告げ、二人で逃げ出す。荒野の途中で会った中国人の衣服をはぎ取る。そのまま、貨車で天津(テンシン)へ逃げ、潜行。
 しかし、金が尽きた。軍隊で衛兵の豊後(藤岡琢也)に接近、話しているところへ隊長がやって来た。とっさにを大宮は「我々は芸人、俺は浪花節語りでこっちは三味線弾き」とウソをつく。慰問目的で食べ物にありついた二人の側へ豊後がやって来て、「お前ら兵隊だろ。兵隊は独特な臭いがするんや」。豊後は将校たちが好き勝手に軍用品を横流しして私腹を肥やしているのに腹を立てていた。二人に盗みの勧誘に来たのだ。夜に巡回中、倉庫の錠を開いておく。そこへ侵入して砂糖を横流ししようという計画だ。作業の途中で見張りの少尉に見つかってしまう。分け前をやるから黙っていろと脅した。翌日、少尉は取り分を取りに来たが、額が少ないと不平を言う。脅しをかけてくる少尉に対し、有田は「出るところへ出してもらおう」、将校たちが軍用物資の横流しをしているのを逆に暴くゾと脅す。
 芸者遊びをしても有田は気分が乗らない。芸者のなかにひときわ目立つ桃子(嵯峨美智子)がいる。店は朝鮮人の根上(遠藤達雄)が経営している「竜宮」。憲兵が呼ぶと女たちは皆、憲兵の方へ行ってしまう。むくれる大宮に根上はちょっと面白いところと、賭博場へ案内する。
 最初はついて勝ちまくったが途中からは負け続け。とうとうスッカラカンになり、根上から借りた金も採られ、拳銃まで賭けて取られてしまう。
 借金のかたに竜宮で働くことになる。洗濯や清掃、日当はたったの30銭だ。大宮は桃子から、賭博場へ誘いこんで金を巻き上げるのはいつもの手口だと説明される。女たちと食事をしながら、一日10人以上客を取らないと一食抜かされる等とあこぎな話を聞かされて、大宮は義憤にかられる。いっそまとめて「女たちを足抜きさせる」ことになる。夜、店を抜け出し、一晩歩き続けて荒野へ逃げた女たち。途中で、有田は「ここで解散だ。自由だ」と宣言するが、女たちはこんなところで放り出されても困る、竜宮へ帰るしかないと不満を言う。大宮は「ピーヤ(兵隊相手の売春宿)をやりませんか」と提案、女たちは喜ぶが、有田はいやだと意地を張る。しかし、大宮の「大将がダメだと言ったら、オレには出来ない」との言葉に負けて、有田と大宮はピーヤ「いろは」を開店。女たちに給金も渡して経営は順調だったが、竜宮の連中が来て有田を殴り、店を壊して行く。泥棒よばわりされた有田は女たちの借金分はもう元を取ったはず、それ以上働かせていたんだからもう十分だと抗弁する。留守だった大宮には明朝8時一対一で勝負と呼びだしがかかる。
 朝、新しいサラシを腹に巻いて出かける大宮。現場で待っていたのは根上だけではない。介添え(神田隆)役だが、実は憲兵隊の隊長、大宮の後を追って来た有田も介添えを申し出る。拳銃を向ける隊長をかわしたところへ、青柳憲兵(成田三樹夫)が来る。根上と隊長は逃げる。憲兵を誤魔化したものの、どうも仕組まれた芝居ではないか。
 その後、竜宮の連中はやって来なかった。いっときの平和が来る。豊後は桃子を一万人にひとりという掘り出しものだと言う。有田は「兵隊は靖国に祀られるが、女たちはこきつかわれて死んでいく」と女たちに情が移って来たと言う。
 大宮は桃子に夜這いをかける。桃子も大宮が好きだと答える。確かに桃子は最高だった。豊後は有田と同意見で、「そら、結婚せなあかんで。そうしないと他の女にしめしがつかん」と助言する。大宮「結婚てのはどうやる?」。豊後には坊主上がりの上州(玉川良一)という友人がいた。この男に坊主代りをさせて三々九度の儀式を行う。晴れて二人は夫婦となるが、「永遠に一緒」などというのは大宮の性に合わない。簡易結婚式の後、有田は妙に孤独を感じた。そこへ大宮が妻を一人にして有田のもとに来る。大宮「上等兵どのの世話は自分がします」と言う。
 青柳憲兵が来る。二人が脱走兵であることの調べはついているが、まだ捕縛するつもりはないらしい。そこへ、豊後が来て憲兵にからむ。豊後が「あのことを知っているぞ」と言うと、青柳は表情を変えて帰っていった。豊後は「青柳は女と男を殺している」と話す。その夜、暗闇で豊後が撃たれて殺された。二人は青柳の犯行を疑うが。証拠がない。
 店での豊後の葬儀の席に青柳も来た。青柳は有田に落ち合う場所を伝える。犯行の確証をつかんでいない。
 大宮は有田に同行するというが、有田は断る。有田は「俺のやりかたでやる。そんなに俺が信用できんのか」と怒る。有田が去った後、逡巡する大宮を桃子が「私のことはいいから、行きなさい」と諭す。
 青柳の取引は「ひとり五千、二人で一万」の口止め料を出せということだった。そんな金はない。断ると有田と大宮は憲兵たちから激しい拷問を受ける。このままでは死ぬ、有田は隊長に「差しで話がしたい」と申し出て、いったん拷問を辞めさせる。有田は「隊長の賭博や阿片など不正を暴露する、青柳の犯罪を訴える」と説くが、隊長は「釈放しろ」と伝えて、収監。有田は釈放というのは「冷たくなって出るんだ」と教える。青柳が手錠の鍵をはずして油断したとき、大宮が青柳の腕を締め上げる。二人は獄舎を出て、隊長室に殴り込み。手瑠弾も使って憲兵隊を大混乱させる。
 サイドカーに飛び乗って憲兵隊所を脱出。次に続くのだった。

        映画川柳「嫁御にも 束縛されない 自由人」飛蜘 

 嵯峨美智子は飛びぬけて色香を発散しているが、展開にはやや納得のいかないところがある。女たちが全員すぐに脱走に賛成すること、青柳の行動が不可解なままであること。今作は軍隊内部というより、街中へ出た二人の行動が描かれる。

【参考書】原作の有馬頼義『続・兵隊やくざ』(光人社NF文庫)より「潜入」「梁山泊」を脚色。
 『RESPECT田中徳三』(シネ・ヌーヴォ、2006)より、田中徳三いわく、
 “これは原作がある程度あるんです。・・・・この作品では藤岡琢也さん、この軽妙さがね。それから成田三樹夫の個性のある芝居。” 

2009年12月28日


GYAO配信
兵隊やくざ脱獄

大映
1966年
86分
 勝新の「兵隊やくざ」シリーズ第4作。監督・森一生。白黒映画。痛快な傑作だった。「兵隊やくざ」シリーズを見ていなかった不明を恥じる。なぜいまどき話題にならないのか不思議なほどの面白さ。原作は有馬頼義。脚色は舟橋和郎。撮影は今井ひろし。編集は谷口登司夫、美術は太田誠一、助監督は大洲斉。
 殴られても蹴られても不撓不屈の反抗精神の塊で、酒と女が大好きという、大宮一等兵カツシンの、どこか愛嬌のある不敵さが痛快。『警視K』のガッツ警視もおんなじでしたね。「兵隊やくざ」は1965年には2本、1966年には3本、1967年には2本、1968年に1本、1972年(東宝)で1本製作されている。森一生監督はこれ一本だけ。田中徳三監督作品が多い。第1作は増村保造監督。

 爆走するサイドカーの車輪。大宮一等兵(カツシン)と有田上等兵(田村高廣)の二人は脱走したのだ。しかし、泥に車輪をとられて止まり、追手に捕われてしまう。二人は奉天の関東軍の陸軍刑務所に入れられた。獄則130ケ条の規則づめに最初から反抗する大宮。殴られても石のようにツラが厚いので、殴った方の手が痛むほどだ。大宮は看守(の椎名伍長:五味龍太郎)に反抗し昼食を削られる。盗みで入獄していた26号・沢村上等兵(田中邦衛)は大宮に飯を分けてくれた。看守に賄賂を渡し沢村は罪を免除され、前線に送られていった。
 有田と大宮はどうせ銃殺ならと脱獄を計る。水道管を壊してその騒ぎを利用し、脱出。だが門衛に気づかれ、線路脇で捕ってしまった。銃殺刑を覚悟した二人だったが、法務官が有田の大学時代の友人・永井中尉(中谷一郎)だったため、生命を救われた。有田は大宮も一緒に助けてくれと強く頼む。有田は一等兵に降等され、脱走しない条件で満州のソ満国境へ送られた。
 途中でいやな客から逃れて列車に逃げ込んできた珠子(小川真由美)を助ける大宮。
 ソ連相手の前線で沢村を見つけた二人は、再会を喜び合ったが、ここでも班長の佐々木軍曹(草薙幸二郎)に睨まれる。軍曹は初年兵教育から叩き直してやると兵隊をしぼる。大宮が言う軍人勅諭がデタラメなので、殴られる場面がある。二人が料亭“花月"で珠子と会っていると、佐々木が来て「ここは将校用の店だ、珠子は俺の女だ」と二人を追い返す。大宮は部屋の外から軍曹に土を浴びせかける。
 沢村が夜間、ヒスイを隠しているところを大宮に見つかる。沢村は、満人との交換で手に入れたもので、内地へ帰るときの足しにするのだと言う。大宮は秘密にすることを誓う。
 物見台からロシアの女兵士を探す大宮。有田は大宮の能天気さにあきれる。佐々木班長は川辺でカモを撃って来る者を募る。ソ連兵が機銃を向けている川辺へ行こうというものはいない。班長は大宮に水を向ける。負けず嫌いの大宮は自分が行くと答える。そして、代わりに外泊を許可してくれと頼む。有田は大宮を止めるが、大宮は自分には弾が当たらないと危険な任務を引きうける。有田「ヤクザの弾とソ連兵の弾はちがうんだ」。大宮はソ連兵に機銃で撃たれるが、なんとか弾に当たらず、撃ったカモを持ち帰る。班長は扱いにくい部下の死を期待していたが、約束通り「珠子に会ってはいかん」という条件で、外泊を許す。大宮が花月亭に行くと珠子らほとんどの女たちは将校宿舎へ出ていて、店には病気で休んでいた八重子(森下昌子)だけだった。

 その夜、沢村は班長に呼ばれ、花月亭へ大宮の偵察に行けと命ぜられる。しかし、外へ出た沢村を途中で呼びとめた班長は隠し持っているヒスイをよこせと迫る。逃げようとする沢村を班長は撃ち殺す。銃声を聞いた有田たちに、班長は沢村が敵前逃亡を計ったために銃殺したと説明。班長が家族のために戦死扱いにするとした沢村の死体を中隊まで運ぶ役目を言いつかった有田は、花月亭から帰る大宮と途中で会う。
 大宮は沢村が隠していたヒスイが失くなっていることに疑念を抱いた。二人は珠子のもとで沢村の通夜をやる。有田は内地へ帰りたいという想いを話すが、流れ流れて北の果てまでやって来た珠子は内地に未練はないという。珠子は、班長がヒスイを持っている兵隊がいるという話をしていたことを思い出す。
 風呂に入る班長の背中を流す大宮は、班長が首から下げているお守りにヒスイが入っているとにらむ。その夜、午前3時に班長を襲撃する計画を立てた二人。あいにく1945年8月9日午前3時、ソ連の猛攻が始まった。
 いの一番に逃げ出す班長。二人も花月亭へ乗り込む。班長は珠子を無理やり連れ出して逃げようとしていた。班長を殴り倒す大宮、「軍法会議も将校もありゃしない」。気を取り直して銃を取ろうとする班長を有田が撃ち殺す。「どうせソ連兵に殺られるんだ」。
 人々が殺到する列車は、走らない。代わりにトラックが出る。珠子をトラックに乗せようとするも、許可証が無いとダメだと断られる。有田は連絡将校にヒスイを渡し、許可証をもらい、珠子に渡す。有田は、トラックで逃げようとしている将校たちを銃で脅して降ろし、大宮に階級章をはぎ取らせる。そして、トラックに一般の市民を乗せる。大宮も珠子とキスをしながらトラックに乗って、出発。少し走ったところで大宮は有田を残してきたことを思い出す。珠子が止めるのも聞かず、トラックからすべり降りた大宮は走って戻る。街の入り口で銃を構えて見送っていた有田のもとへ帰るのだった。「完」

 他の出演者は野口大尉(島田龍三)、衛兵司令(守田学)、現場監督風の男(水原浩一)、憲兵軍曹(浜田雄史)、不審番(越川一)、将校A(藤川準)、将校B(志賀明)、森野上等兵(黒木英男) 。

        映画川柳「殴ったら その手が痛む 石のツラ」飛蜘   

【参考書】森一生『森一生 映画旅』(草思社、1989)より、森一生の言葉、
 “丸亀港から出航して、北支へ行きました。・・・当時、北支などもう占領したように言ってましたけど、全然占領してないんですよね。占領してたのは点だけですよね。都市の。どこの城を持ってるというだけですから。だから、そこへ行くときにはすぐ襲撃されますよ。ゲリラに。
 ・・・・ぼくは自分が死ぬとは全然思わなかったです。俺は弾が当らんと思ってましたからね。・・・・ぼくは終戦伍長なんですよ。三年おって上等兵。こんな上がらんやつないですよ。大学出て。・・・むしろ認められんようにしていましたから。・・・・見習い士官か将校になってかえって死んでますよ。
 ・・・・実際、ずいぶんありましたよ、脱走したのが。ただ、それはやっぱり『悪名』や『兵隊やくざ』は本当のことを描いてないですね。あれでは、当時の逃げるということがどんなにひどいことかは、わからんでしょうな。結局、危なくない範囲内の娯楽みたいなもんですね、『悪名』や『兵隊やくざ』は。実際にやったら、なんともいえんぐらい、むごずらしいものでしょうな、脱走ということは。”  

 原作の有馬頼親『続・兵隊やくざ』(光人社NF文庫)では、「翡翠(ヒスイ)」という章があり、豊後がヒスイを持っていて佐々木軍曹に殺される。

2009年12月29日

GYAO配信 兵隊やくざ大脱走

大映
1966年
80分
 勝新の「兵隊やくざ」シリーズ第5作。監督・田中徳三。白黒映画。脚本は舟橋和郎。撮影は武田千吉郎。音楽は鏑木創。編集・美術など第4作とは異なるスタッフ。田中徳三は抒情味のある画面を撮る。

 ソ連が攻撃をして満州の戦線は一触即発だった。朝倉隊は玉砕を覚悟の戦車壕掘りを命ぜられていた。兵隊どうしの花札でイカサマを見破った大宮。大げんかになる。修羅場になりそうなときに全員手紙を書けとの命令。家族にあてる遺書である。有田上等兵(田村高廣)は字の書けない大宮二等兵(勝新)のために、遺書となる手紙を書いてやった。
 大宮は偵察に出たときに慰問団の親子を救うが、男の子に変装していたのは若い娘・弥生(安田道代)だった。
 兵隊の好奇の目の前で弥生は「さくら」や「会津磐梯山」などを歌う。歌に浮かれて踊りだす大宮。
 納屋の弥生に会いに行った大宮は将校たちに殴られるが、最初は殴られていた大宮、途中から反撃に転じ、相手をぶちのめす。有田が止めに入る。
 准尉は列車に乗せる条件で将校に娘を抱かせるよう父親に命ずる。弥生は生きるために承諾する。一方、弥生のことが気がかりな大宮はヨウカンを持って夜中に納屋に行く。見張りの将校を殴り倒し、准尉を殴って外の柵にしばりつける。弥生に「自分も夜ばいに来たんだ」と告白する大宮。弥生は「ここにいてもいいのよ」と言うが、大宮は自分の寝床に戻る。翌朝、朝食の途中で准尉に呼ばれた大宮は三人にリンチを受ける。有田が体長に連絡して、体長が助けに入る。体長は慰問団の父娘を列車まで送る任務を大宮に与える。
 列車が出発しかけたとき、父娘は大宮を一緒に内地へ帰ろうと誘う。迷う大宮、しかし友だちを置いてはいけない。大宮が誘いを断って部隊へ戻ると、ソ連軍の攻撃を受け部隊は全滅していた。死体の山のなか、有田を探す大宮。
 爆風に飛ばされた有田は生きていた。生き残った二人は南へ向かう。途中でゲリラの攻撃を受けるがゲリラが集めた武器庫で将校の服を手に入れた二人は日本軍の将校に化けることにする。
 有田中尉と大宮少尉となった二人は柳田大尉(内田朝雄)率いる部隊にもぐりこむ。質疑で化けの皮がはがれそうになる大宮。学徒兵に花札を教えたり、対戦車攻撃を教える羽目になるも、勝てるわけがないと昼寝を決め込んで、かえって部下の信頼を得る。
 もと憲兵の身分を隠して上等兵になっている青柳(成田三樹夫)が二人の正体を知って接近してくる。朝鮮を経由して逃げる計画に加担してくれというのだ。有田は断る。
 翌日、斥候に出た大宮は北満開拓団の老人に出会う。サンカタンに病人や女、子供が取り残されているから助けてくれというのだ。有田が老人を伴って大尉に交渉する。しかし、大尉は撤退作戦に支障をきたすと断る。有田は食い下がる。困っている同胞を見捨てていいのか。トラック1台と下士官5名、自分と大宮で開拓団民避難の任務をやり遂げるという。大尉はしぶしぶ承諾する。
 選ばれた5人のなかに青柳も入っていた。トラックの荷台で青柳はトラックを乗っ取り、朝鮮へ逃げようと提案する。最初は疑心暗鬼だった兵隊たち(伊達三郎ら)も、有田らがニセ将校と聞いて意を決した。くぼみに車を取られて空回り、いったん降りて押し、くぼみを脱した直後に、有田らに銃を突きつける。青柳の行為に大宮は怒り、二人は争い、大宮が青柳を刺しそうになる。それを有田が止めて、いかにも自分たちはニセ将校だが、諸君の家族と同じ同胞を救う任務は成し遂げたいと主張する。共感したみんなは行動を共にする。青柳も連れて行く。
 サンカタンで病人と幼児をトラックに乗せる。学齢児童と大人は歩く。バショウまで50kmの道のりだ。途中で共産ゲリラの襲撃を受け、青柳が死亡する。「こんど生まれてくるときも又、悪党さ」という言葉を遺して。
 夜間の行軍もあって無事にバショウに到着することができそうだ。「完」。

        映画川柳「満州の 荒野を歩く 思い出に」飛蜘  

2010年1月
8日


DVD
兵隊やくざ 俺にまかせろ

大映
1967年
89分
 シリーズ第六作。脚本・高岩肇、監督・田中徳三。撮影・宗川信夫、音楽・鏑木創。
 昭和二十年北満。前作のラストで軍隊に戻ってしまった二人は、特攻訓練をきびしく指導する岩兼曹長(内田良平)の木崎独立部隊に入っていた。孟家屯付近である。部隊長(須賀不二男)と田沼参謀(渡辺文雄)は、徐々に南方に対応する作戦に変更しなければならないとの命令を受けていた。田沼は中国人の密偵・趙を使っていた。趙はゲリラは撤退気味だと報告する。
 兵舎の大宮に会いに来る木崎隊の三人と殴り合う大宮。部隊長は孟家屯付近で襲撃を受けたという情報を受け、趙からの情報と異なるのを気にする。
 物干し場で下着が一枚多いのに気付いた竹内(酒井修)は一枚を懐に入れる。その後、盗みの調べが入る。鉄拳制裁が始まり、大宮は自分が盗んだと申告するが、有田は目撃兵がおどおどしているのに気付き、「盗んだのがそっちのほうが先らしい」と喝破する。竹内は自分が盗んだと言うがもはや紛糾してしまい、名誉が傷ついた岩兼は怒る。岩兼は大宮と外に出て、「軍律なし」の約束で殴り合う。ところが、参謀に止められる。私闘は禁止だ。「上官を殴るとは」と大宮が処分されそうになるので、岩兼は弁護する。しかし、田沼は耳を貸さない。怒った大宮は田沼の参謀憲章をむしり取ったため、なおさら罪が重くなる。重営倉である。
 田沼と小学校で同級生だった有田は大宮を許してくれと依頼するが、田沼は「私情を捨てること」こそが出世には大切だと主張する。有田は貴様は野元きぬ子を捨て、中将の娘と結婚、きぬ子は自殺した、そんな都合のいい私情があるもんか」と非難するが、田沼は「公私混同はしない」と強硬だ。
 有田は営倉の大宮にタバコを差し入れ、さらに缶詰を差し入れして落としてしまい、見張りに発見され、自分も営倉入り。わざと入ったのである。
 一方、部隊には孟家屯(モウカトン)から緊急連絡。敵襲だという。田沼は2個分隊で行かせると主張する。隊長は1個大隊でも大変だと言うが田沼は耳を貸さない。岩兼部隊に命令を告げる。田沼は密偵にも部隊の動きを伝える。岩兼は密偵なんかに軍を動きを伝えるのはと懸念を表明するが、田沼は問答無用だ。後の展開で田沼はこの密偵の裏切りを計算していたことが分かる。二人も営倉から出され、木崎部隊へ入る。
 トラックで進行中、敵が鏡で連絡し合っているのを目撃。完全に動きが読まれているようだ。馬ですれ違った農夫も無線機を隠して運んでいた。運転手の横井が撃たれ、野火で火葬した。
 周りは敵でいっぱいだ。有田は「田沼を幼な友達だからと信じた俺が悪い」と話すが、大宮は「くよくよしないでのんびりいきましょう」と前向きだ。街にはまだ慰安所があった。今日で閉所、最後の晩だった。大宮は第1作の音丸の妹分(長谷川待子)と部屋に上がる。「さらばラバウルよ」の歌声が聞こえる。
 翌日、トラックで移動中に民家付近から襲撃され、防戦。民家には傷ついた女・秀蘭(渚まゆみ)が隠れていた。女は日本語が分からないらしい。岩兼は運転出来る大宮にトラックで女を町へ送らせる。有田も一緒だ。途中で女は熱を出す。弾が入ったままだからだ。このままでは死ぬ。有田と大宮は女の弾を抜く。しばらくして、ゲリラに襲われ、有田は崖から追い落とされる。大宮はゲリラに捕われる。秀蘭は趙の妹だった。彼ら兄妹の両親は日本軍に殺された。一方、前線でも、もと時計工の竹内(酒井修)は時計の修理に余念がない。大宮が運転したトラックが発見されたという情報が岩兼隊の野口通信士に入り、彼は投降したかと疑う。
 有田はゲリラに捕われた。大宮のもとへ秀蘭が来てロウソクを消す。いよいよ死刑の宣告かと覚悟する大宮に、秀蘭は「あなたの思い通りにして下さい」と話す。日本語ができたんだ!目覚めると、枕元に匂い袋があり、「もう二度と会えないでしょう。孟家屯には行かないで下さい」と書かれた手紙が置いてあった。しかし、大宮には字が読めない。外へ出るとゲリラは出発してもういなかった。荒野で有田は木に逆さに吊るされていた。有田を救出して大宮は義侠心のあった岩兼懐かしさに孟家屯に行く。
 岩兼はトーチカにたてこもって防戦していた。大宮と有田は後方からゲリラを撃つ。
 景徳珍の大岡部隊が無事集合したことが参謀のもとに入る。岩兼部隊の動きは敵の攻撃を誘導するための偽装だったのだ。援軍を投入せず、死守せよとの命令に首をかしげ、さらに大岡部隊集結を知って、岩兼は利用されたことに気づく。「俺たちを囮にしたんだ」と。
 やがて、岩兼も銃撃で倒れた。二人がやっとトーチカ内に駆け付ける。死に際に岩兼は「敵と闘って死ぬのは本望だが、味方に騙されるのは御免だ」と言う。
 トラックで二人は景徳珍に向かう参謀の車を待ち伏せ、田沼を殴って、荒野に置き去りにする。

        映画川柳「最期まで 直した時計が 爆風に」飛蜘

 前作で、既に満州はほとんど負け戦さ。軍隊の規律もゆるんで、二人は脱走していたので、本作の話には無理がある。

2010年1月8日


DVD 兵隊やくざ殴り込み


大映
1967年
89分  シリーズ第七作。脚本・笠原良三と東条正年、監督・田中徳三。撮影・武田千吉郎、音楽・鏑木創。

 二人が居候している部隊の分隊長(伊達三郎)に大宮と水巻は郵便物受領を命ぜられる。郵便物の中に大宮宛てがあり、字の読めない大宮はきっと梅香からの手紙だろうと水巻に読んでもらう。軍旗室の前だったので通りがかった香月少尉(細川俊之)に制裁されるが、水巻をかばった大宮は香月に戦友をかばったことをほめられる。上官からほめられたことのない大宮は香月に一目おく。分隊へ戻る途中で糧食を取りに行った黒磯一等兵(丸井太郎)に会った大宮は見張りの班長を気絶させ、油を奪い、池へダイナマイトを放り込ませて魚を捕り、天ぷらにする。上官に見つかるが分け前をやる約束。食事時間にみんなで魚を食べるが、有田は臭いが変だと食べない。点呼があるが、有田の分まで食べた大宮は腹痛。腹下しで便所にかけこむ。次々に兵隊たちも同様に。有田は油がヒマシ油だったと推定する。混雑する便所の使用区分でトラブル。 
 連隊は軍旗に敬礼。大宮「(軍旗がみすぼらしいので)ハタ作る布がない」、日本もおしまいだと感ずる。相撲大会で大宮が勝っている。決勝戦の途中で女郎たちがやって来る。女のなかに明美(野川由美子)がいる。ヨソ見をしていた行司役の赤池曹長(南道郎)は大宮が負けたと判定、それを香月少尉が正して大宮の優勝と決まる。大宮は優勝でもらった酒を「少尉と一緒に飲みたい」と少尉の部屋を尋ねる。読書中だった少尉が女は未経験だと聞いて大宮は驚くが、酒もそこそこに自分は慰安所へ急ぐ。近道をしようとしてかえって泥池に落ちてしまう。慰安所に着くと有田が待っていた。女はほとんど残っていない。大宮にあてがわれた女、さつき(岩崎加根子)は与謝野晶子の短歌や詩の話ばかりする文学少女で大宮は閉口する。なにわ節を歌ってごまかすが・・・。赤池曹長と滝島准尉(小松方正)は香月や大宮に不満をもらし、大宮から有田を切り離す計画を練る。
 霧の夜、遠くに信号灯が上がる。他の部隊が全滅したとのことで、分隊に斥候の命令が出る。有田には急に師団で暗号教育を受けよという転属命令が出た。滝島の陰謀である。期間は三か月、有田は大宮宛ての手紙を書いて枕にはさむ。斥候から帰った大宮は有田がいないので悶着を起こす。戦友が手紙を見つけるが大宮には字が読めない。
 赤池は慰安所の上がりをピンハネしている。稼ぎが悪い女郎をもっと働けと殴る。大宮が分隊を無断で外出、さつきを尋ねて来る。手紙を読んで欲しいのだ。赤池に殴られたさつきに代わって病気の夕子が読む。有田は自分が帰るまで無茶をせず我慢しろと書き置いていた。しかし、大宮は女を殴った赤池を殴り、重営倉の処分を受ける。赤池や滝島は大宮に減食や苦役(肥かつぎ、薪割り)を課す。通りがかった明美が止めた。 
 一方、ひどい懲罰を目撃した水巻は香月少尉に直訴、少尉は副官・影沼(安部徹)に正当な扱いを要求するが、副官は大宮は上官侮辱罪、再考の余地はないと冷たい。明美が大宮を優しく誘惑し、大宮もその気になるが、副官室に急に副官がもどってきて、かえって重い懲罰を受けてしまう。営倉で手足を縛られて転がっている大宮。
 有田が成績優秀でひと月半で復帰して来た。有田は営倉の側で見咎めた士官に大声で返答し、大宮に自分が帰って来たことを知らせる。少尉は有田と話す。少尉が手を回して原隊復帰を早めたのだった。
 有田は赤池や滝島、影沼らの不正を暴露する遺書を暗号書にしたと、脅喝し、大宮を暗号室勤務にしろと申し入れる。暗号室勤務になった大宮に有田は戦局がいっそうあぶないことを告げる。久しぶりに有田に公用章を渡された大宮は途中で農家のアヒルを取って、明美のもとへ。しかし、慰安所は閉鎖、明美は称徳の日本人は張家江まで引き上げろと命令が出たと説明する。俺たちは綺麗なままで別れるんだなと感慨にふけっている・・・ヒマはなかった。死んだ夕子を見捨てて出発しようとする女郎屋の主人を殴り、女たちと別れた大宮が、分隊でも夕子の霊を弔っているときに、緊急指令が入り、非常呼集がかかる。 
 軍旗を移動する命令を受けた香月少尉の分隊は谷間に入ったところをゲリラに撃たれる。通信で襲撃場所が大岡廟付近と聞いた大宮はひとりで駆け出す。
 殴り込みといっても、大宮が着いたときにはもはや分隊は全滅していた。ゲリラがたてこもる民家のヤグラにボロボロの軍旗が上げられていた。その軍旗を取り戻すために大宮は敵の民家に突っ込んでいく。途中、転がっていた赤ん坊を抱き上げ、ケガをした中国人の母親に返す大宮。そのときは撃つのをやめた抗日軍。ひとりで突撃し、軍旗を奪還した大宮。軍旗を奪還を使命としてやって来た分隊に会い、先頭に立って香月少尉の軍旗とともに帰還する。
 暗号室では資料を燃やしていた。有田「戦争は終わっていたんだ」。大宮はそれならまだ「後始末がある」と、将校室へ。三人が貴重品を分けあってていた。大宮「日本が負けりゃ軍隊なんかないんだ」と彼らを殴り倒す。日本で悪いことをしていたらぶっ殺すゾと。
 有田は大宮に「これからはお前が俺の上官だ」と告げる。二人は意気揚々と軍隊を出て行く。

        映画川柳「ボロボロの 軍旗が重い 命より」飛蜘

 戦争が終結していたのに、軍旗を護送する命令に準じる無意味さが際立つものの、大宮ひとりでゲリラを全滅させる展開は非現実的に過ぎる。あり得ない。カッコ良すぎ。前作の『俺にまかせろ』のトーチカ奪還もあり得ない戦闘だ。こうして見ると、やはり第四作『兵隊やくざ脱獄』が前半の刑務所と後半の最前線との対比も鋭く、原因不如意な喧嘩もなく、傑作でした。

2010年1月9日


DVD 兵隊やくざ強奪

大映
1968年
80分
 シリーズ第八作。脚本・舟橋哲郎と吉田哲郎、監督・田中徳三、撮影・森田富士郎、照明・伊藤貞一、美術・内藤昭、音楽・鏑木創。戦争が終わった中国を舞台に欲の渦巻く人間模様が展開する。『兵隊やくざ脱獄』に次ぐ傑作でした。

 戦争が終わり、敗走し南下する兵隊は満人の武装蜂起に出会い、途中で殺されることも多かった。柵や木に吊るされた兵士たちを有田と大宮は目撃する。瀕死の兵士たちに残った乾パンを与える二人。その後、終戦を信じない関東軍に監禁された。中隊長は加藤(須賀不二男)。抗日ゲリラの女(佐藤友美・松竹)を取り調べる松川大尉(夏八木勲・東映)は拷問に耐える女を銃殺にする決定を下す。
 途中で助けた兵隊たち(江守徹、千波丈太郎)が抜け穴を使って牢屋に来るが自分たちだけ小屋の缶詰を持ち去り、有田と大宮を救出しない。ネズミが縄を噛み切って、外に出た二人は銃殺直前の女を助けた。しかし、途中で女は姿を消し、代わりに赤ん坊が棄てられていた。大宮は赤ん坊を助けようと言うが、有田は世話ができんと捨てておけと言う。いったんは棄てたままにしておこうと思ったが泣き声を聞くと、二人は非人情を貫くことができない。赤ん坊と一緒の旅になる。有田は離ればなれになったときの落ち合う先は宋家屯と決める。赤ん坊は深川の手ぬぐいを持っていた。日本人の子であろう。
 ヤギを盗もうとする大宮。そのとき、有田は民族解放軍に捕縛された。赤ん坊は置き去りだった。解放軍は日本軍に奪われた軍資金十万ドルを探索していた。有田は金のありかを知っているとウソをつく。見張りを分け前で騙して脱出する有田。支那服を着てごまかす。
 極悪兵隊たちは加藤部隊が全滅した跡を探す。松川はいない。十万ドルを盗んだ兵隊というのは松川たちだった。兵隊たちは大宮と出会う。大宮は意趣返し、そこへパーロ(八路軍)が来る。喧嘩を止めて岩陰に隠れる男達。折悪しく赤ん坊が泣きだす。泣かすなと押さえこまれた赤ん坊は死んだ。怒る大宮、しかし赤ん坊は死んでいなかった。大宮は兵隊たちが松川と盗み。横取りされたという金貨を分けると言われるが、断る。その代わり、かれらの持ち金を奪う。
 ヤギと出会った有田は泣き声を手がかりに大宮を探すが、泣いていたのは別の赤ん坊だった撃たれて足を負傷する有田。 
 一方、赤ん坊と大宮は中国人と出会う。強い人を探しているという男はクラブで接待の女(小林直子)を紹介する。その後、クラブのボスから大宮は博打場の三人(金内吉男ら)を片づけてくれと依頼される。大宮は賭け勝負に出て、彼らのイカサマを暴くが、実は彼らは解放軍、大宮は外を出たところを連れさられる。解放軍交渉係(伊達三郎)に金のありかを問われるが、大宮には分からない。言い残すことを聞かれて赤ん坊のを面倒みてくれと頼む。銃殺直前に部屋に来た女が釈放を命令する。サングラスを取ると女は大宮が助けた秋蘭だった。彼女は日本の学校を出て日本人が好きだという。しかし、盗まれた軍資金を取り戻さないと日本人を帰国させることはできないと言う。大宮は「俺は日本男児だ」と、金を取り戻す約束をする。 
 クラブのボスの正体は松川だった。松川は自分の正体を知る助手と女を殺して日本へ逃げようとしていた。車で逃走する途中、加藤部隊の全滅の跡へ立ち寄った。焼け跡から隠した金貨を掘り出すのだ。車に潜んでいた大宮が現れる。金の袋が掘り出されて二人の争いになる。二人がもみあううちに拳銃が発砲。倒れたのは松川だった。
 10万ドルを解放軍に返す大宮。足止めをくっていた日本人が帰国できることになった。あの極悪兵隊たち三人もトラックに乗っていた。大宮は三人に金を返す。有田を探すが見当たらない。トラックが出た後で、荒野を足をひきずって歩いてくる有田の姿があった。再会を喜ぶ二人。赤ん坊と一緒に内地へ帰って、隅田川のポンポン蒸気に乗らなくちゃとはしゃぐ。

       映画川柳「日本兵 解放軍から 強奪す」飛蜘

 だいぶ後に制作された唯一のカラー作品『兵隊やくざ火線』(増村保造監督)を除き、白黒の『兵隊やくざ』シリーズを全作見た。ベスト3は(1)『脱獄』、(2)『強奪』、(3)第一作となる。これらはどの作品ももっと高く評価されてよい。

【参考書】『RESPECT田中徳三』(シネ・ヌーヴォ、2006)より、田中徳三いわく、
 “だんだんと話が、軍隊から離れていくのが多くなってきて。最後のほうは、戦争が終ってね。そうなってくると、面白くない。痩せ衰えた「兵隊やくざ」になって。敗戦で、ごったがえしてるような、そこでなんぼ大宮が暴れ回ったって、面白くならないですよ。だから、話自体が作りようがなくなるわけです。僕が撮った最後は、68年の『兵隊やくざ 強奪』ですか。このへんはね、民間人になってる大宮とか、やっぱり魅力がなくて、話自体がつまらなくなってますね。まァ、シリーズものというのは仕方がないね。
 だから「兵隊やくざ」に関しては、ひっくるめてね、その作品がどうこうっていうのじゃなしに、シリーズというものがね、だんだんと先細りっていうかね。手がなくなっちゃうんだあなぁ。”

■森繁久弥氏が亡くなったが、追悼記事のなかに『森繁自伝』が傑作と書かれたものがあった。そこで、古本屋で探して入手し、読んで見たら、これが大傑作であった。
 森繁一家は満州で7年間生活しているが、敗戦時の満州は大混乱であった。『兵隊やくざ 強奪』もかくやと思える話が満載、とても大きな声では言えないエピソードもあり、小説以上の面白さであった。
 モラルを無くした人間の動物的生活が彷彿とさせられる場面ではしばしば『兵隊やくざ』の映画の場面も思い出された。現実は映画以上に悲惨だったのだ。

■「週刊文春」2016年2月11日号<春日太一の木曜邦画劇場第178回>で『兵隊やくざ 強奪』を取り上げた。兵隊やくざを「BL(ボーイズ・ラブ)眼鏡」をかけて見ると、大宮と有田の関係はただごとではない、8作目で二人はもはや子育てをしている夫婦にしかみえない、当時の日本映画の先進性に感心しないではいられないという指摘である。本作を肯定的に評価した初めての批評。
ビデオもDVDも未発売

2007年6月にCS日本映画専門チャンネルで3回放送されたことがある

2016年2月4日BSプレミアムで放映

(とうとう見られました)
新兵隊やくざ 火線


東宝
1972年
92分
 これだけカラー作品で、第8作の続編ではない。
 増村保造監督作品。大映が倒産後だったので勝プロ製作で、配給は東宝。
 監督・増村保造、製作・勝新太郎・西岡弘善、原作・有馬頼義、脚本・増村保造・東条正年、企画・久保寺生郎、撮影・小林節雄、音楽・村井邦彦、美術・太田誠一、編集・谷口登司夫、録音・大谷巖、スチール。小山田幸生、助監督・遠藤力雄、照明・中岡源権

 (あらすじ gooによる)[桃色文字は池田の追記]
 どこの部隊でも、もてあまされた大宮一等兵(勝新太郎)と有田上等兵(田村高廣)。昭和19年、北支の最前線の北井小隊に、転属命令という名目で、ていよくほうり出された。戦争嫌いの北井小隊長(大瀬康一)と抜群の戦争屋神永軍曹(宍戸錠)の指揮下に入った大宮と有田は、八路軍のスパイとして連れて来られた黄少年の事で早速、ひと悶着。少年は北井小隊に協力している村長・王(大滝秀治)の息子、黄(坂本香)であるが、スパイと決めつける神永軍曹は、大宮に殺せと命じたのだ。大宮は、子供を殺したくないと、その馬鹿力で神永軍曹をやっつけてしまった。それがきっかけで、少年の姉である美人の芳蘭(安田道代)と知りあえる。神永軍曹も、芳蘭に目をつけており、大宮と神永の対立は激しくなっていった。
 その頃、北井小隊周辺の情勢は急速に緊迫していた。八路軍の動きが激しくなり本部から連絡のトラックは全て爆破されてしまっていた。日本軍の情報が全てキャッチされていることは疑う余地もなかった。河村兵長(松山照夫)、近藤一等兵(滝川潤)、下士官(勝村淳、橋本力)。
 だが、スパイが何処にひそんでいるのかまるで見当がつかないまま、北井小隊は孤立状態を続けるしかなかった。隊の全滅は目の前に迫っている。神永軍曹は、芳蘭にスパイ容疑をかけた。
 北井小隊長は、有田に大宮に芳蘭を口説きおとせと、スパイ捜査を命じた。有田は自分には出来ないと断り、その役目を大宮に依頼する。前線でイチャつく大宮を神永は射殺してしまえと命ずるが、命じた斥候がちょうど敵に撃たれてしまった。ことは急を要する。三日の猶予が「すぐ」に短縮されてしまった。強引に芳蘭を抱きしめ接吻し、スパイなのかと率直に聞く大宮に、芳蘭は自ら八路軍のスパイであることを自白し、今夜、八路軍の夜襲があると教えるのだった。
 北井小隊は、芳蘭のおかげで、八路軍を撃退したが、芳蘭を逃がした大宮は、神永軍曹に叩きのめされ重営倉入り。芳蘭の弟に救い出され、芳蘭に八路軍に入らないか、と言われて、大弱りする。その頃、二回目の八路軍の襲撃で、北井小隊長は死に(スパイ容疑で村長を殴り殺した神永は戦闘後に営倉入りを命じられた。神永は河村に命じて陣地内で小隊長を射殺する)、小隊は壊滅状態になっていた。
 芳蘭の機知で、中国服に着がえた大宮は、有田を探し出すべく火線(最前線)を突破し、日本軍部隊の中へ舞い戻ったが、変装がバレて脱走兵として一室に監禁されてしまった。そしてその部屋には探していた有田もいた。
 生き残っていた神永軍曹は、ぬけぬけとその部隊の一員として、大宮・有田を裁く側に立っていた。大宮・有田の危機に、芳蘭は神永軍曹の前に身を投げだして二人の命を救った。
 悪らつな戦争屋神永軍曹への激しい怒りが大宮の身体を走った! 大宮の手に黒く光った軽機銃が固くにぎりしめられた。

【かぽんのこだわり道場ミリタリー館】より参考の「あらすじ」
 厄介者扱いの有田上等兵と大宮一等兵は北支の前線部隊である北井小隊に転属を命じられる。小隊長の北井少尉は中学出の幹候で戦争嫌いの温厚な性格だが、隊で実質的に権限を握っている分隊長神永軍曹(宍戸)は狡猾で汚い性格だった。
 転属移動中に有田と大宮の乗ったトラックが八路軍に襲撃され、奇跡的に有田と大宮だけが助かる。しかし、その場で北井小隊が駐屯する村の村長の息子(少年)がスパイとして捕まる。北井少尉は親日派の村長の息子がスパイのはずはないと反論するが、神永軍曹は独断で少年の処刑を大宮に命じる。大宮はあの手この手で神永を愚弄し、処刑を中断させ、ようやく北井少尉の命令で少年の命を助ける事が出来る。
 その晩、少年の姉芳蘭が大宮のもとを訪れ、お礼として鶏を置いていく。大宮は美人の芳蘭にすっかり一目惚れする。しかし、芳蘭を狙っていたのは大宮だけではなかった。神永軍曹も目を付けており、スパイ容疑という名目で芳蘭を犯そうとした。間一髪の所で大宮は芳蘭を助けるが、芳蘭がスパイではないかという容疑は晴れたわけではなかった。
 北井少尉は大学出の有田に、芳蘭と恋仲になってスパイかどうかを探れと命令する。有田は大宮が芳蘭を好いている事を知っており、大宮にその役目をやらせる。大宮は、芳蘭を宝物のように思っており、なかなか手を出す事ができない。期限の日が迫り、ついに大宮は手を出そうとするがするが、芳蘭はそれに先んじて「八路軍が12時に南から攻めてくる」との情報を教える。芳蘭はやはりスパイであったが、大宮の事を好きになっており情報を教えたのだ。しかし、そのまま報告すれば芳蘭は処刑されてしまうため、大宮は芳蘭を逃がしてから報告する。  神永軍曹は敵を逃がした罪で大宮を処罰すべきと進言するが、北井少尉はまずは敵襲に備えるべきとする。案の定、時間通りに敵襲があり、準備していた日本軍は八路軍を撃退する。撃退後、大宮は敵を逃した罰としてタコ殴りにされて営巣に入れられる。その晩、村長の息子が大宮のもとに忍び込んできて、芳蘭のもとに手引きする。
 八路軍の芳蘭のもとに行った大宮は、芳蘭から八路軍に入らないかと誘われる。一旦は断った大宮だったが、芳蘭の魅力に次第に惹かれていく。しかし、芳蘭から今晩も日本軍襲撃があるとの情報を聞いた大宮は、残してきた有田上等兵が心配になり、急いで村に戻る。  村の日本軍は敗退し、そこには北井少尉の戦死体があった。しかし、有田の姿も神永の姿もない。実は、北井少尉は神永軍曹に殺され、有田は拉致されていったのだ。
 その後、芳蘭から有田の居場所がわかったことを聞き、大宮と芳蘭は中国人に化けて潜入する。しかし、これは罠であり芳蘭もろとも捕まってしまう。有田、大宮、芳蘭は縛りつけられ、銃殺だと伝えられると、芳蘭は神永軍曹の女になる代わりに二人を釈放するよう頼む。神永軍曹はこの条件を聞き入れ、清い関係のままだった大宮の目の前で芳蘭を犯すのだった。
 翌日二人は放免となったがそれも嘘だった。銃殺される直前で、二人は八路軍に助けられる。武器をもった大宮は単身神永軍曹のもとに戻る。神永軍曹との素手での決闘の末、芳蘭が拳銃を手にした神永を銃殺し、二人は八路軍のもとに戻る。「神永に抱かれた私を嫌いか」と問う芳蘭に大宮は半狂乱になる。それを見て芳蘭は無言で去っていく。後に残った大宮と有田は中国人の服を着て再び歩いていくのだった。

  【かぽんのミリタリー道場より、作品評価】 やくざ上がりの大宮一等兵とインテリの有田上等兵の織りなす、娯楽アクションシリーズだが、本作は初めてのカラー作で製作も大映から東宝に代わり、勝プロが製作に関わっている。従って、これまでのモノクロシリーズ8作とは連続性はなく、独立した内容と捉えていいだろう。
 カラー作品ともなると作品のイメージがガラッと変わる。モノクロだと映像の粗が目立たないがカラーではそうはいかない。どうしても背景や小道具等の出来具合が問題となる。そう言う意味では、本作はそれなりにしっかりしているし、モノクロ作品ではあまりわからなかった軍装がなかなかリアルであるということもわかった。軍服がカーキ色になっただけでこれほどまでにリアル感が増すというのは驚きでもある。
 ただし、内容の出来はお粗末。ストーリーはこれまでのモノクロシリーズと似たようなものだが、八路軍スパイの女と恋仲になってしまう大宮一等兵(勝)は、以前のような豪放さやスケベさはなく、八路軍側につく売国奴のようなイメージである。勝プロの意向なのかどうなのかは知らぬが、人物設定に変化が見られるし、中国への配慮なのか八路軍が美化されているのも気に入らない。芳蘭の台詞「八路軍は、盗むな、嘘つくな、捕虜殺すなが規則だ」など、どこからそんな馬鹿なイメージが出てきたのだろうか。
 それにも増して最悪なのは音楽効果。八路軍女スパイ芳蘭との逢い引きシーンになる度に、「チャラリーン」とエレクトーンの間抜けな音楽が入る。余りに兵隊やくざシリーズとは相容れないメロディはどうしてしまったのだろう。本作がもとから単発のつもりだったのかもしれないが、続編が出なかったのは正解だと言える。これ以上、兵隊やくざのイメージを崩すべきではないから。
 戦闘シーンは冒頭の場面だけはそこそこ迫力があるが、それ以降はどんどんしょぼくなっていく。また、モノクロシーリーズにも増して大宮の神懸かり的戦闘に拍車がかかり、スタンディング機銃撃ちや弾丸飛び交う中を両軍陣地を走り抜けるなどもう無茶苦茶。迫力があるわけでもなく、リアル感を損ねているだけ。
 勝プロが関わったせいであろうが、本作は大宮一等兵にかかるウエートが非常に高い。有田上等兵の出番は極端に減り、完全に脇役扱い。どういうつもりで製作したかは知らぬが、結果的には兵隊やくざに泥を塗った形だ。宍戸錠の悪役軍曹役は本当に悪そうな奴だ。

 「兵隊やくざ」シリーズの根底に流れているのは<敵は軍隊にあり>というもの。その主張が明快に出たのがこの第9作。軍隊の非道さが神永(宍戸錠)に仮託して描かれる。こんなにも味方の兵隊を弾圧してしまっては、戦闘にならない。唯々諾々と上官・神永の命令に従う兵隊たちも情けない。それと比べての大宮の奮闘ぶりはリアルさを欠いてしまっている。







シェイクスピア作品の映画化やその関連の映画は除く。
それらは別ファイルになっている。→ 『シェイクスピアの劇と映画』


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