体罰の5つの副作用 『閉ざされた扉のかげで―家族間の愛と暴力』(M.ストロース著)には、体罰を受けてきた人は、配偶者への暴力が多い、子どもへの暴力が多いといった研究例が紹介されています。

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http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuimafumi/20130302-00023704/


体罰の5つの副作用: 体罰の定義「体罰の心理学」反対するなら根拠を持とう


碓井真史 | 新潟青陵大学大学院教授(社会心理学)/スクールカウンセラー


2013年3月2日 17時55分配信

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体罰に関する朝日新聞の記事:各メディアが大きな報道をしました。


大阪の市立高校、女子柔道と、体罰の問題が大きく話題になりました。学校現場では体罰は違法ですが、ある程度の体罰は必要だとする容認派の人も根強くいます。なぜ体罰はいけないのか、心理学的に考えてみましょう。

◆体罰とは:体罰の定義◆

体罰の定義:体罰とは、親、教師、コーチなどが、指導する上で与える肉体的苦痛を伴う懲戒です。つまり、殴ったり長時間立たせたりする懲らしめです。体罰だと非難された人が、「体罰ではなく指導である」などと反論することがありますが、指導目的であるのは当然です。そうでなかれば、ただの暴力です。

体罰禁止というと、殴りかかる生徒に何もできないのかと言う人もいますが、そういう生徒を押さえつけたり、一時的に教室外に連れ出したりするのは、体罰ではありません。ただし、どの程度のことが体罰になるのかは、子どもの年齢や状況によって変わり、体罰の定義は機械的には決められないと文科省も考えています。

2013.3.13.補足

2013.3.13文科省が体罰の具体例を明示(読売新聞)
2013.3.13文科省が体罰の具体例を明示(読売新聞)

◆体罰は効果的か◆

一時的に人を動かす方法として、体罰や暴力は、とても効果的です。暴力でサイフ奪うことができますし、竹刀で殴れば、私語をやめさせることもできるでしょう。しかし、強力だからこそ、様々な問題が生じます。

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◆体罰の「副作用」(危険性)◆

○体罰の副作用1:人間関係を悪くする

体罰を受けると、相手を恨んだり、憎んだり、恐れたりします。心理学の研究によれば、やる気はコーチや先生との良い人間関係の中で生まれます。体罰で無理に動かしても、本当のやる気は出ません。親子の場合、言うことをきかせたとしても、親子関係が悪くなっては、もちろん困るでしょう。非行少年をただ殴っても、彼らは殴った相手と社会を恨むだけでしょう。

○体罰の副作用2:自主性の喪失、心の健康被害

圧倒的な暴力の前では、人は無力になります。元巨人軍の桑田さんが、「体罰は自立を妨げる」と語っているように、体罰で無理やり言うことを聞かせた結果、模範囚のように言いなりになり、自主性や積極性が失われる恐れがあります。

子どものころの体罰で精神疾患を持ちやすくなる、という研究結果も報告されています。

大人になってから、子どもの頃受けた体罰の苦しみを告白する人も、大勢いるでしょう。

アンケートの結果から(読売新聞2013.3.19)
アンケートの結果から(読売新聞2013.3.19)

女子柔道の選手のみなさんも、体罰により心身共に深く傷ついたと語っています。女子柔道”失望と怒り”全文参照。

補足(2013.3.20)

日本オリンピック委員会(JOC)による「暴力行為を含むパワハラ、セクハラについてのアンケート調査」の結果、選手の約11・5%が「暴力やパワハラなどを受けた経験がある」と回答しました。

○体罰の副作用3:暴力を教えてしまう

幼いときから体罰を受けると、大人の思いとは裏腹に、「必要があれば暴力を振るっても良い」と誤解して学んでしまいます(心理学用語で言うと「モデリング」「観察学習」)。暴力事件を起こす少年や、家庭内暴力を振るう少年が、幼いときから体罰を受けるなど、暴力が身近にある環境で育っていたことなどは、珍しくありません。

また、子どものころから体罰ばかりを受けていると、親や指導者になったときに、体罰以外の教育、指導方法が使えなくなる(思いつかなくなる)場合も、あるでしょう。

『閉ざされた扉のかげで―家族間の愛と暴力』(M.ストロース著)には、体罰を受けてきた人は、配偶者への暴力が多い、子どもへの暴力が多いといった研究例が紹介されています。

○体罰の副作用4:他の指導法を学べなくなる・さらに高圧的になる

体罰の効果は、強烈です。だからこそ、この方法に頼ってしまうと、他の方法を学べなくなってしまいます。普通は、親も先生も苦労しながら、どうしたらこの子に教えることができるかと、あの手この手を使ってみます。そうして、この子にとっての良い方法を、大人も学んでいくのです。

体罰という強烈な罰を使用し、子ども、生徒が服従する体験を重ねると、態度がさらに高圧的になり、体罰を与えている感覚が麻痺し、体罰が増加していく危険性があります。

○体罰の副作用5:いじめの誘発

いじめに関する教育心理学的な研究によれば、いじめを誘発しやすい担任のパターンがあります。一つは、ただの友だちのような優しいだけの先生。クラスに統制がとれず、いじめが生まれやすくなります。もう一つのパターンが、高圧的な先生です。子ども達が先生のまねをして、他の子ども圧力をかけるようないじめが生まれやすくなります。

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◆罰の効果の限界◆

罰は、一般に何をしてはいけないかは教えても、では何をしたら良いかは教えません。強い体罰による恐怖で、私語のない静かな教室は作れるかもしれませんが、勉強への意欲関心は、高まらないでしょう。激しい体罰を与えればスポーツを愛するようになるでしょうか。

補足(2013.3.20)

JOCの柔道に関する報道によると、選手達は園田監督の体罰をとても恐れ、監督にメッセージカードを渡したり、「園田組」というTシャツを作ったりしていました。それらの信頼関係は、体罰を避けるための工夫であり、を全部演技だったと述べています。

◆少年犯罪と罰◆

悪いことをした人には、制裁が必要です。犯罪少年の中には、少年院に入って初めて反省する人もいるでしょう。しかし犯罪心理学の研究によれば、少年と少年院の職員との人間関係ができないと、更正は難しいとされています。

また、非行少年たちも「罰を受けないようにしよう」とは思っています。ただ彼らは、「だから、ばれないようにしよう」と思ってしまうのです。

◆愛のムチ◆

愛のムチが絶対にないとは言いません。殴られたことで、愛が伝わり、人生やり直す人もいるでしょう。しかし、「愛のムチ」を気軽に口にし行為を正当化する人は、おそらく愛のムチではありません。

◆調教師のムチ◆

ライオンの調教師は、ムチを持っています。しかし、このムチでライオンを叩いて芸をさせているわけではありません。動物に芸を教える方法は、基本的に「報酬」です。

ムチは、俺がお前たちのボスだという権威の象徴です。見た目の怖い先生、大きな怒鳴り声なども、痛みや恐怖で人を動かすものではなく、権威の象徴でしょう。

◆体罰を与える人、受ける人、社会、時代◆

かつては、社会全体に体罰がありました。殴る方も殴られる方も、身体的、精神的に慣れていました。軍隊で上官が部下の尻を叩く際には、決して骨が折れるような叩き方はしませんでした。殴られるときには、歯を食いしばり、しっかりと立っていました。

しかし、現代では両者共に慣れていないために、心身共に大きな傷を負うことがあります。叩く側が感情的になっているとなおさらです。

アメリカの一部やシンガポールでは、体罰が合法ですが、本人に納得させ、親の承諾を得、校長や訓練を受けた教師が、決められた回数だけ、叩きます。怪我がないように、細心の注意が払われます。

また、偶発的な体罰の場合には、与える側と受ける側の力の差が問題になることもあります。体が大きくて強く、多少乱暴な文化に慣れている人は、この程度のことは体罰ではないと感じるのですが、受ける側には、心身のダメージが大きいこともあるのです。

◆スポーツと体罰◆

スポーツの世界には、ピラミッド型の上下関係があるでしょう。うまく機能すれば、良い意味での体育会系として、上司の指示に責任を持って従う、率先して行動するということになるでしょう。

 厳しくも楽しいスポーツを 
 厳しくも楽しいスポーツを 

しかし、悪い面が出てしまうと、上からの命令が絶対になってしまいます。またスポーツは、肉体的な苦痛が伴うものです。ある程度の負担がかからないと、体も強くなりませんし、面白くありません。

これらの方向が誤った方向に行くと、体罰になるのでしょう。一部のスポーツ集団では、昔から体罰が加えられ、それが良しとされてきました。しかし、現代社会はそれを許しません。体罰なしの新しいスポーツ文化が必要ではないでしょうか。

今回の事件を受け、日本体育学会も緊急声明を出しています。




体罰による運動部の指導は、~決して容認できるものではありません。実験心理学の研究成果が示すように、閉じられた空間の中で人を罰する権限を持たせると、その権限は次第にエスカレートしていき、他方で罰を受ける側もそれを甘受するようになります。同様に無気力で無抵抗な人間を作り出すという実験結果も見られます。


出典:日本体育学会理事会 緊急声明

◆高校と女子柔道関係者のみなさんへ◆

大きく報道された関係者のみなさん。深く、大きく傷ついていることと思います。学校の場合は、悪い意味での注目が集まり、校外で校名を出しにくいなど、「スクール・トラウマ」となっているでしょう。学校全体が傷ついていますから、学校全体の癒しが必要です。もう一度、すばらしい学校、すばらしい女子柔道になることを、期待し、応援しています。

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