地球防衛軍THE MYSTERIAN1957東宝  安達博士は言う「彼らは永遠に宇宙の放浪者です・・・我々は決して彼らの轍を踏んではならない」と。何気に渥美がミステリアンドームの中に侵入した時に、防衛軍の攻撃で死んだミステリアンの割れたヘルメットや破れた衣服の隙間からケロイド状の皮膚がグロテスクにのぞいていた。これは十万年前の大原子兵器戦争の結果、ミステリアンは遺伝的な異常を抱えることになったということだが、最後の安達博士のメッセージといいこの宇宙人の描写といい本多流の、当時の世界的な核兵器の保有・使用未遂に対する警告なのだろう。








地球防衛軍THE MYSTERIAN



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地球防衛軍   THE MYSTERIAN(1957・東宝)
■ジャンル: 特撮
■収録時間: 88分

■スタッフ
監督 : 本多猪四郎
製作 : 田中友幸
脚本 : 木村武
撮影 : 小泉一
音楽 : 伊福部昭
特技監督 : 円谷英二

■キャスト
佐原健二(渥美譲治)
平田昭彦(白石亮一)
土屋嘉男(ミステリアン統領)
白川由美(白石江津子)
河内桃子(岸本広子)
志村喬(安達謙次郎)
地球防衛軍


「ミナサン!ヨリコンデクダサイ!」1957年にこの作品を見たならばかなりぶっ飛んだだろう。まさに新しいものずくめの特撮である。時代は過ぎ今となっては、大いに見劣る部分も存在するが、ノスタルジーとして楽しもう。新たな発想と創意工夫に満ちた宝箱のような作品である。


■あらすじ


富士山山麓で渥美助教授(佐原健二)と白石博士(平田昭彦)は、怪奇現象を目撃する。数日後、白石博士は山崩れに呑み込まれ行方不明になる。その時なぞの巨大ロボットが山麓の村を強襲する。やがて地球外生物ミステリアンが襲来し、「半径3キロ平方メートルの土地と何人かの女性を下さい」と提案する。「我々は平和を望む」と言ってはいるが、果たして信用して良いのだろうか?


■世界の子供たちに夢を与えた作品


もしこの作品公開当時に小学生だったならばこの世界観に度肝を抜かれただろう。そして、この時期に少年時代を過ごした人たちにとってこの作品の思い出は宝物に違いない。そういった作品を現在の尺度で云々言うことは、この作品を「古き良き思い出」として大切に思っている人々に対して失礼に当たるので一切控えたい。

本作は「ノスタルジーあふれる画期的な特撮映画」の筆頭にあがるエポックメイキングな作品である。この作品を楽しむ特権はあの世代の人にのみ与えられた特権なのかもしれないが、せめて1960、70、80、90年代生まれの我々は、その特権の欠片を楽しもうではないか。

とにかく童心に戻って楽しんでみよう!


■伊福部マーチの心地良い迫力!


白川由美
しかし、この「TOHO SCOPE」と打ち出される瞬間に奏でられる壮大なマーチは何なんだ!この心地良い迫力。これが有名な伊福部昭の「地球防衛軍のテーマ」か!とにかくワクワク感満点のマーチである。しかもこの作品から東宝のワイドスクリーンは始まったのである。

そして、当時特撮ものでタイアップしている森永チョコレートの名前入り提灯を囲んでのお祭りシーンと浴衣を着込んだ白川由美(1936- 、後の二谷英明の妻)と河内桃子(1932-1998)の姿。昔のお祭りは純朴で良い。この頃の作品を見ていると古き良き日本の姿は否応無しに眼に飛び込んでくる。最近の祭りは、日本古来のものと言うよりは、カラフルでただただ騒がしいものに成り果てている傾向がある。

やはり浴衣の色使い一つで、それを着ている女性のほとんど全ての価値が見いだされるというものだ。うるさすぎる色使いは無個性を結果的に生み出すということを最近の女性は理解すべきだろう。あとなるべく流行は追わずに取り入れるべきである。

私の友人のモデルをしている女性は、地味な古来の色使いの浴衣を着こんで祭りに行って、人目をひいていました。やはり浴衣においてもその物腰と、清楚さとが日本的美を引き出すんだと言ってました。


■世界最初のロボット型怪獣モゲラ君


本作の最大の魅力は、間違いなく円谷特撮のオンパレードである。まさに「エルビス・オン・ステージ」ばりに当時の最高峰の特撮が惜しげなく披露されている。特に地盤沈下のシーンやモグラ型ロボット「モゲラ」君の登場なぞは素晴らしい。

このモゲラ君は、今日的に見ると何気に憎めない可愛らしい造形だ。なんとなくクマのプーさんのようなずんぶりむっくりぶりが良い。ちなみに世界映画史上初めてのロボット型怪獣の登場がこのモゲラ君の登場シーンなのである。この後にメカニコング、メカゴジラへと継承されていくのである。

しかし、富士山麓の田舎町を襲撃するモゲラ君は迫力満点である。このシーンは見事に作りこまれた特撮技術であり、やはり日本人はこういう器用な特撮をさせればピカイチである。しかし、一連のモゲラ君襲撃のシークエンスにおいて、何よりも魅力的なのは白川由美の入浴姿である。この肩から首筋のラインが素晴らしい。まさに、モゲラ君の襲撃にあわせて入浴する美女の姿とはナイスなタイミングである。

本多=円谷の素晴らしさは、その特撮と人間の交差する瞬間の描写のうまさである。しかし、このモゲラ君との防衛戦といい、のちのミステリアンとの攻防戦といい自衛隊の全面協力のもと本物の戦車、機関銃や火炎放射器を使用しているので画面に得も知れぬ臨場感が生み出されている。


■ワレワレハ・・・宇宙人芝居の始まり


ミステリアン
「このままでは20年後に人類は滅んびてしまいます」「人間は科学で他の生物を支配したじゃありませんか?」By平田昭彦

さらに豪華な特撮は続くのだが、前半に一人、気になる男が登場する。自衛隊の中尉役で登場するのだが、「コイツなかなかオーラがあるな」と思えば、なんと無名時代の中丸忠雄(1933- )の若き頃の姿だった。この男こそ『野生の証明』(1978)においてまだ年端もいかぬ薬師丸ひろ子を前にして「娘を裸にしろ」という悪徳ロリコン刑事を演じた男だ。

しかし、この男よりも事前に知っていなければ絶対分からない役者がミステリアン統領を演じる土屋嘉男(1927- )である。これは声音も変えているし、ゴレンジャーのようなマスクから覗くのは口許だけで絶対に誰だか分からない状態である。しかも土屋は本来はメインの役柄で出演の予定だったのだが、この一切顔の出ないミステリアンのボスを演じることに固執したという。

しかし、このセリフ廻しいいねぇ~。「戦争を避けるための小さな犠牲です」っていかにもな怪しさ。しかもこの土屋嘉男=宇宙人芝居から、多くのちびっ子は今に至るまで宇宙人といえば〝ミステリアン〟=「ワレワレハ・・・」的な喉を震わせる話し方を知らず知らずにするに至っているのである。

それにしてもミステリアン・ドームの中で披露するプラズマスクリーン。あれって現在のワイド型液晶テレビそのものじゃないか?この先見性に一番驚いたかも・・・。しかし、ミステリアンの「地球人の女を貢物として渡せ」という要求は1950年的にOKなのか?リアルすぎだろ。

まさにやっていることは侵略国が、手当たり次第に娘っこを誘拐して手篭めにしている状態そのもの。ミステリアンはすでに1000人の女性を拉致しているというし、それこそやっていることは『戦国自衛隊』(1979)の渡瀬恒彦&角野卓造並みだろ。


■グッニュース!ミナサン、ヨリコンデクダサイ!


本作は邦画において初めて宇宙人が侵略者として登場する作品だが、このミステリアンの造形は、今見ればゴレンジャーのようで若干滑稽だが、当時としてはかなり新しい造形じゃないんだろうか?プラモデルの箱絵でお馴染みの小松崎茂(1915-2001)によるデザインである。

しかし、物語の方は結局国連主導による地球防衛軍を編成することになるのだが、通常兵器では全くミステリアンに敵わないことで、核兵器の使用を他国は主張するのであるが、安達博士は「地球の破滅です!」と断固拒否するのである。ここが実に世界唯一の被爆国にこだわる本多猪四郎らしいところである。

そして、戦いが形勢不利になった時に唐突にカミカゼのように「グッニュース!ミナサン、ヨリコンデクダサイ!」とハロルド・コンウェイの声と共に新兵器のマーカライトファープの登場と相成る。そうパラボナ・アンテナ型の最終兵器である。

しかし、日本ってのは敗戦間際のドイツと同じく、根本にあるカミカゼ・メンタリティは変わらないと感じさせられる一瞬である。よく言われているように本作が、朝鮮戦争後にソ連及び中国の共産国連合軍が本土上陸作戦を敢行した場合の日本及び自由主義国家連合軍の日本での防衛戦を示唆しているのだとすれば、結局は通常の兵力ではなくカミカゼに頼るというオチはあまりに能天気で楽観主義過ぎないか?


■特撮は子供も大人も楽しめるものだった・・・


それはともかくとして、結果的にミステリアンは宇宙軌道上にある宇宙ステーションに回避し、再び乗っ取れる惑星を探して流浪するのである。かもしくは来週にでも形成を整えて再度油断している富士山麓に上陸するのかもしれない・・・

安達博士は言う「彼らは永遠に宇宙の放浪者です・・・我々は決して彼らの轍を踏んではならない」と。何気に渥美がミステリアンドームの中に侵入した時に、防衛軍の攻撃で死んだミステリアンの割れたヘルメットや破れた衣服の隙間からケロイド状の皮膚がグロテスクにのぞいていた。これは十万年前の大原子兵器戦争の結果、ミステリアンは遺伝的な異常を抱えることになったということだが、最後の安達博士のメッセージといいこの宇宙人の描写といい本多流の、当時の世界的な核兵器の保有・使用未遂に対する警告なのだろう。

そう考えると昔のSF=特撮映画というものは現代社会に対する強力な風刺・警告の要素も持ち合わせていたことが認識できるのである。

ちなみに本作は1959年に「The Mysterians」のタイトルで全米公開され好評を博した。円谷英二がアメリカを訪れた時に、「ミステリアン」という言葉がアメリカ人に良く知られていたので驚いていたという。

- 2007年7月18日 -

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