死の宣告と闘う女たち 名誉殺人の闇


“死の宣告”と闘う女性たち~名誉殺人の闇~ 投稿者 gataro-clone

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名誉の殺人





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名誉殺人(めいよさつじん、英:honor killing)とは、女性の婚前・婚外交渉(強姦の被害による処女の喪失も含む)を女性本人のみならず「家族全員の名誉を汚す」ものと見なし、この行為を行った女性の父親や男兄弟が家族の名誉を守るために女性を殺害する風習のことである。イスラーム文化圏では同性愛者も対象となる。



目次 [非表示]
1 概要
2 イスラーム法における「名誉殺人」
3 ヒンドゥー教における「名誉殺人」
4 日本における類例
5 批判
6 関連書籍
7 参照
8 関連項目
9 外部リンク


概要[編集]

国際連合人権高等弁務官事務所の2010年の調査によると、名誉殺人によって殺害される被害者は世界中で年間5000人にのぼるとされる[1]。

アムネスティ・インターナショナルは名誉殺人が行われている国および地域として、バングラデシュ、トルコ、ヨルダン、パキスタン、ウガンダ、モロッコ、アフガニスタン、イエメン、レバノン、エジプト、ヨルダン川西岸、ガザ地区、イスラエル、インド、エクアドル、ブラジル、イタリア、スウェーデン、イギリスを挙げている。名誉殺人は、主に中東のイスラーム文化圏を中心に行われているため、イスラーム教と関連した風習と見なされることが多い。しかし、イスラーム教徒以外の間でも行われており、実際はイスラーム教とは無関係であり、専ら地域の因習によるものであるとされる(下記参照)。

名誉殺人は特に、パキスタンで多く発生しているとされる。これは、パキスタンは中央政府の統制力が弱く、地方においてはその土地の部族の力が伝統的に強いため、部族の慣習法が国の法律に先立つ状態となっているためである。実際にパキスタンの憲法では、連邦直轄部族地域について、パキスタン連邦議会および州議会の立法権限が及ばない地域であると明記しており、現地の部族勢力にかなりの裁量が許される状態にある[2]。また、クルド人などの中東圏出身者がヨーロッパなどに移民することによって、名誉殺人の風習も持ち込まれ、スウェーデンなどで度々行われ、社会問題になっている。

パキスタンでは、2011年に900人の女性が名誉殺人の犠牲になったとの調査もある[3]。ヨルダンなどでは年間15~20人の犠牲者が出ており、「名誉殺人」は殺人罪で裁かれるものの、婚前交渉などで家の名誉を汚したと認定された場合、情状酌量が認められて減刑になる場合がある[4]。トルコでは、2000年から2005年の間に、1806人の女性が殺害され、さらに、5375人が家族からの圧力により自殺している[5]。イラクにおいて、サッダーム・フセインの独裁時代に比べて、女性の地位が著しく悪化し、名誉殺人も増加している[6]。

殺害方法は家族会議で決定される。例として、絞殺や火あぶりなどが挙げられる。直接に殺害するのではなく、自殺するように家族が強制する場合もある。また、被害者は娘に限定されず、母親なども対象となる場合がある[5]。

名誉殺人においては、たとえどのような理由があろうとも婚前・婚外交渉は許されないことだと考えられており、自分の娘を殺してもその地域においては家族の名誉を守った英雄として扱われるという。また、婚前交渉など無くとも、単に「男性を見た」という理由だけで発生する殺人もある[3]。

もちろん、名誉殺人が行われている地域の国々でも、近代法治国家においては犯罪であり、殺人であると規定されている場合がほとんどである。しかし、法体系が整備されていない国や、上記のパキスタンのように国家の力が地方にまで及ばない国においては、いまだに数多く行われている。

家庭内で行われる殺人であり、また、この風習が根強い地域では、殺人行為自体が「名誉」であるとされるため、実行犯は家族ぐるみ、地域ぐるみで庇われることになる。そのため、たとえ国家によって法が整備されていても、警察に届けられることはほとんどない。よって、その国の治安機関の能力が未熟な場合、発覚すること自体が稀になってしまい、現在報告されている事例も氷山の一角とされる。

殺害方法を決定する家族会議には母親・姉妹も積極的に加わることも珍しくない。イギリスのケンブリッジ大学研究チームの調査によると、ヨルダンの10代の男女850人以上を対象に調査したところ、全体では33.4%が「支持」もしくは「強く支持」すると答えた。支持する考えを示したのは男子で46.1%、女子でも22.1%に達した[7]。

しかし一方で、母親や姉妹が反対したにもかかわらず、父や兄の手により殺されることもある。2008年には、イラクのバスラで、占領軍兵士と仲良くなったイラク人女性が、父親と兄の手により絞め殺された[8]。父親はインタビューに対し、イスラームの男として、父親として、自分と家族の信仰と名誉を守っただけであり、警察も地域の友人も自分を賞賛してくれたと述べ、さらに娘のような恥さらしは生まれてすぐ殺してしまうべきだったと述べ、改めてこのようなふしだらな娘は殺されて当然と主張した[9]。また、父親が娘の殺害に反対しても、その父親を監禁して父親以外の家族が娘を殺害するケースや、家族が殺害を拒否しても、周囲の嫌がらせや圧力などにより殺害に及ぶケースもあるなど、必ずしも家族内のみで決定されるわけではない[10]。

「名誉殺人」の被害者を積極的に救出している団体として、スイスに本部を置くシュルジールがある。日本では、シュルジールの活動を支援するページがシュルジールの活動を紹介している。

イスラーム法における「名誉殺人」[編集]

イスラムでは名誉殺人をアラビア語でجرائم الشرف(ジェリーマトシェレフェ)と呼んでいる。 一般には、イスラーム教の教義において名誉殺人が正当化されている、と理解されているが、実際にはイスラーム法によって禁止されているという意見もある。これには、以下の二つの根拠がある。
古典イスラーム法(シャリーア)では婚外交渉はジナの罪として禁止されているが、それは男女を問わない。また、婚外交渉に対する刑は既婚者、未婚者によって違う。 既婚者の場合:石打ちによる死刑。
未婚者の場合:鞭打ちの上、追放。

刑の執行はカリフの権限、とされており、家族に殺害する権利はない。家族による殺人は、禁止されている私刑とみなされる。

現在では「名誉殺人」の風習は、イスラーム教普及以前の文化に起因するものとする意見が強いが、この風習がある地方のイスラーム教徒自身も含め、イスラーム教の教義と関連付けられて考えられていることが多い。また、建前上では男女平等の罰を与えるとはいえ、婚外交渉に対して極めて抑圧的なイスラーム法が既存の家父長制と結びつき、この慣習を温存させる原因となったという批判もある。しかしイラン、サウジアラビアに代表される保守的、厳格派のシャリーア解釈は婚外交渉や同性愛、場合によっては強姦の被害者も死刑の対象にする。(『死刑の歴史』も参照)

ヒンドゥー教における「名誉殺人」[編集]

ヒンドゥー教では、伝統的な階級制度カーストが根強く残っているが、特に経済成長が著しいインドでは、近年異なるカーストの男女が恋愛関係になることが増えている。インドでは、異なるカーストで関係を持ったカップルを親族らが殺害する「名誉の殺人」が相次いでいる。社会学者プレム・チョードリーによれば、インドの名誉殺人の犠牲者数は年間数百~千人で、近年は増加傾向にあるという。インド政府は、これまで罰則のなかった名誉殺人の「教唆」に罰則を設ける刑法改正案を準備中である[11]。名誉殺人そのものにも厳罰を下せるよう法改正を検討している[12]。

インドでは、カーストや社会的地位の違いに苦しむ恋人を、名誉殺人を含む様々な攻撃から守るため、「全インド恋人党」という政党が2008年に結成された[13]。しかし、伝統的な価値観では「正しいこと」であるため、名誉殺人が起こっても、政治家や警察も見て見ぬ振りをする事が多い[14]。

日本における類例[編集]

前近代における日本にも名誉殺人に相当する慣習が存在した。→密懐法

批判[編集]

近代文明からは決して受け入れられることのないこの風習は、多数のイスラーム国家も含む国際社会において悪と捉えられ、批判されている。国連などの公的機関はもとより、アムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする人権団体も非難声明を発表している。

また、あまり知られていないことだが、イラク前大統領のサッダーム・フセインも名誉殺人を批判していた。フセインが死亡したことと関連しているのかは不明だが、国連によるイラク国内の人権状況についての報告では、近年のイラクでは特にクルド系イラク人の間で名誉殺人が広く行われるようになっているとされた。クルド系のサイトには、クルド人少女の殺害映像が掲載されており、大きな問題となっている。この映像では、警察官も含む大勢の人々が集まっているが、誰一人として彼女を助けようとする者はいなかった[15]。 この少女が殺された理由は、彼女がムスリムの男性と駆け落ちするためにヤズディ教からイスラム教に改宗したというものであった。

関連書籍[編集]
生きながら火に焼かれて(スアド著、松本百合子訳、ソニーマガジンズ出版) ISBN 4-7897-2875-7
著者の、名誉殺人(義理の兄によって火あぶりにされた)から奇跡的に生き延び、20回以上の手術を経験するという壮絶な体験を自ら克明に記録したノンフィクション。ヨーロッパでは大反響を巻き起こし、それまであまり知られていなかった名誉殺人の存在を広く知らしめた。フランスなどではベストセラーとなった。身の危険を防ぐために、著者の近況は明らかにされていないがヨーロッパで夫と子供と共に暮らしているという。
参照[編集]
1.^ “毎年5000人が名誉殺人の犠牲に、国連人権高等弁務官”. AFPBB News. (2009年10月15日) 2013年5月20日閲覧。
2.^ パキスタンのテロとの闘い (PDF) - 防衛省防衛研究所
3.^ a b “「少年を見た」娘、母親が酸を浴びせて死なす パキスタン”. AFPBB News. (2012年11月6日) 2013年5月20日閲覧。
4.^ “家族の許可なく結婚したヨルダン女性を兄弟が「名誉殺人」”. AFPBB News. (2009年8月14日) 2013年5月20日閲覧。
5.^ a b 城戸久枝 (2013年9月15日). “名誉殺人 アイシェ・ヨナル著 閉鎖的社会が生み出す不幸”. 日本経済新聞 2013年10月3日閲覧。
6.^ “イラク、脅かされる女性の尊厳と生命”. AFPBB News. (2008年4月5日) 2013年5月20日閲覧。
7.^ “「名誉殺人」への支持、若者にも 中東ヨルダン”. CNN. (2013年6月21日) 2013年6月21日閲覧。
8.^ Her crime was to fall in love. She paid with her life
9.^ My daughter deserved to die for falling in love
10.^ 洞口昇幸 (2013年9月14日). “名誉殺人 母、姉妹、娘を手にかけた男たち”. 現代ビジネス (講談社) 2013年9月29日閲覧。
11.^ 階級差カップルの悲劇 インド「名誉殺人」続発 (1/2ページ) - MSN産経ニュース 2010年7月20日
12.^ “名誉殺人が増加するインド、刑法改正を検討”. AFPBB News. (2010年2月10日) 2013年5月20日閲覧。
13.^ Ammu Kannampilly (2011年5月17日). “「全インド恋人党」、愛を阻む壁に挑戦”. AFPBB News 2013年5月20日閲覧。
14.^ “「不実な娘許さぬ」、父親が娘を斬首・焼殺 インド”. AFPBB News. (2012年6月22日) 2013年5月20日閲覧。
15.^ “クルド人少女の殺害映像、ネット上に公開 - イラク(ショッキングな写真が含まれているので注意)”. AFP BB News. 2007年5月6日閲覧。

関連項目[編集]
イスラム教
ヒンドゥー教
女性差別
インドにおける性に関する問題
殺人
強姦
反イスラーム主義
死刑の歴史

外部リンク[編集]
シュルジール(スイスのサイト)
シュルジールの活動を応援するページ

http://www.diplo.jp/articles01/0105-4.html
天秤にかけられるパキスタン女性の命

ロラン=ピエール・パランゴー特派員(Roland-Pierre Paringaux)
ジャーナリスト

訳・瀬尾じゅん
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 2000年12月4日、国連総会は、女性を犠牲者とする「名誉の殺人」をなくすための対策を求める決議を採択した。この年の夏には女性問題に関する国連特別総会が開かれているが、それに先立つ2月に、ヨルダンで二人の王族が、この種の犯罪に対する刑罰を減免する現行刑法の改正を訴えるデモ行進の先頭に立った。しかし、今日もイスラエルで、パレスチナで、レバノンで、トルコで、エジプトで、モロッコで、あるいはウガンダで、ブラジルで(i)、家名を傷付けたという理由で奪われる命がある。[日本語版編集部]

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 女性が「台所の事故」で生きた火柱になるのは、パキスタンでは珍しいことではない。イスラマバードにある、暴力の犠牲となった女性を救済する市民団体の設立者、シャハナズ・ボカリのもとを訪ねれば納得がいく(1)。

 彼女が見せてくれた写真に写っているパキスタンの女性達の焼け爛れた体は、バンガロールの病院で会った若いインド女性達と同じくらい悲惨である。しかし、ここではインドのように結納品や金銭が絡んでいるわけではない。このような残忍な事件は日常的に広がった暴力の一環なのだ。パキスタン人権委員会によれば、少なくとも女性の80%が、男性による暴力の犠牲になっているという。

 イスラム共和国パキスタンには、女性に向けられる特殊な暴力犯罪が存在する。いわゆる「名誉の殺人」である。この表現は、同様の犯罪が過去に、あるいは現在でも、不貞や復讐がらみの事件で温情の対象となっている他のイスラム諸国をも想起させるが(2)、パキスタンでの件数の多さは群を抜いている。

 「名誉の殺人」はイスラム以前からの慣行であって、女性を真っ先に虐げるイスラム原理主義を追い風としているとはいえ、真に宗教的な根拠を持つとは言えない。この問題は、何よりも、「名誉の殺人」は罰しないという、文化的、社会的な背景から来ているのだ。その根源には、バルチスタン州や北西辺境州、さらにはパンジャブ州やシンド州の部族社会にどっしりと根づいた古くからの慣習がある。彼らはこの種の殺人をカロ・カリ(不貞な関係の男女)の名で呼ぶ。

 こういった頑迷な家父長制の支配する共同体では、男達は、少しでも異性と戯れたとか、少しでも不貞の疑いがあるという理由で、妻を、娘を、姉妹を、そして母親を殺すのだ。ラホール、ペシャワール、イスラマバードなどの新聞を読めば、この種の事件の輪郭がうかがい知れる。2001年1月、スーム・モリの村で、二人の兄弟が若い男を銃殺した。家のそばをうろついて妹を冷やかすのをやめるよう、前から警告していたのだという。この二人は男に続いて妹も処刑した。トバ・テック・シングでは、妹を殺した若い男が警察に対して、彼女は同じ村の男性と「不義の関係」(というのがお決まりの表現)を持った疑いがあり、「自分が叱っても聞かなかった」と供述した。

 マンディ・バフディンでは、猜疑心に毒された事務員が「野獣のような凶行に及ぶ」事件があった。妻と子供五人を斧で惨殺したのである。さらに二人の子供が瀕死状態で病院に運ばれた。この殺人鬼は「妻の態度に疑いを持っていた」という。別の村では、二人の少年少女が川で裸になって水浴びをしているところを取り押さえられた。二人は性的関係を持っていたという村人の告発により、相談の後に家族自身の手で公開処刑された。さらに別の村では、若い女性が夫となった男性と婚前交渉を持っていたことを兄に打ち明け、殺されるという事件があった。

 どの事件を見ても、女性の体は家族の名誉の受け皿にされているかのようだ。不貞な関係を持つことで、女性は社会秩序をかき乱す。彼女の体は、男の意のままに売られ、買われ、交換される。このルールを犯そうとした女性、あるいは単にそう疑われた女性には、罰が下される。その罰は死に至ることもある。責められた女性が何を言ったところで重みを持たない。不義の性的関係や恋愛関係があると言われるだけで、一族の名誉、とりわけ男性の名誉が耐えがたいほど傷付けられたとみなされる。という理由を盾にして、男達は自らの手で落とし前を付けるわけである。

家か死か
 「実際に不義の性的関係を持った女性と、そう疑われただけの女性とを区別することはまったく意味がない。男の名誉を傷付けるのは他人の目、不実に向けられた疑惑なのだ。この国では、名誉は真実とは何の関係もない」と、この問題に関する多くの報告書の一つでアムネスティー・インターナショナルは述べている(3)。このような背景があるから、しばしば聞かれるように、ある男性が、となりで眠っている妻に裏切られた夢を見て目覚め、彼女を刃物で刺し殺すといった話も、なんら驚くに値しない。たいていの場合、手を下すのは兄弟、夫、叔父達である。人の集まる場所で斧を振るって、あるいは地方によっては銃を持ち出して。そして多くの場合、殺人者は逃げおおせる。
 こうした事件がどれくらい広まっているのかを推定するのは難しい。女性の地位向上のための全国委員会の委員長、シャヒーン・サルダル・アリ女史は、去年一年間で、少なくとも一日に三人の女性が「名誉の殺人」の犠牲になったと見ている。1999年には約1000件あったことが判明しているが、部族社会の残る地域には、明るみに出ない事件もたくさんある。「パンジャブ州だけで一日一件は起こっていると、ラホールの新聞が報じています。でも、これは毎年、全国で生まれる数千の犠牲者のほんの一割といったところでしょう」と、パキスタン人権委員会のタンヴィール・ジャハン氏は考える。この種の犯罪は性的関係だけに関わるわけではないから、犠牲者の数はなおさら捉えがたい。見合い結婚をいやがったり、離婚を申し立てたりしても、死の報いを受けることになる。 否決に終わった「名誉の殺人」処罰法案のきっかけとなったサミア・サルワルの悲惨な事件を見るとよくわかる。彼女は二人の女性弁護士、ヒナ・ジラニとアスマ・ジャハンギルを通じて離婚を申し立て、面会に押しかけた母親が杖の代わりと称して連れてきた運転手に殺された。ジラニ弁護士も重傷を負った。ペシャワール商工会議所の会頭職にある父親は、二人の弁護士こそ娘を殺した張本人だと言って提訴した。

 ジラニ弁護士は、「女性の生存権は彼女達が社会的規範と伝統に厳格に従うかどうかにかかっているのです」と語る。ほとんどの場合、社会における女性の立場は「家か死か」という古い言い回しで、身も蓋もなく括られてしまう。「女性には、家具ほどの個性さえもない。最近も、若い女性が自分の意に反する結婚をするよりは、と首を吊った。それだけが、こうした不幸な女達に許されることなのだ。両親の意志に逆らうのであれば、自ら首を吊るか、殺されるかを選ぶことだけが」という論説を、昨年、ドーン紙が掲載している(4)。

 ザ・ニューズ紙は「農村に住む女性達の絶望」を報じ、「この声なき生き物は、原始的な生活様式に縛り付けられ、物よりもひどい扱いを受けている。彼女達は台所の用具であって、生きるも死ぬも男達の一存なのだ」と書いた(5)。パキスタンの「名誉を尊ぶ男達」はと言えば、好き勝手に女遊びをする権利を持っており、相手の女性を死の危険に陥れるのも構わず、自制しようなどとは露ほども考えない。

 この制度では、妻や姉妹が不貞を働いたとされる男は被害者ということになり、共同体は男が落とし前を付けることを期待する。何もしないことはさらにひどい不名誉となる。つまり、「名誉の殺人」は刑法上の犯罪とはみなされず、妥当な見せしめのように考えられているのだ。パキスタン人の多くが同意見であり、部族社会に属していない人々でも同様である。これでは、動機が名誉であろうとなかろうと、殺人者を殺人者として扱う法律を実施するのは難しい。この種の殺人者に対しては、政府もおおむね目をつぶっている。「警察も裁判所も、名誉の殺人の慣行を暗黙のうちに認めていて、他の犯罪者とはまったく異なる扱いをしているのです」と、ジャハン氏は言う。

 例えば、シャリア(イスラム法)のもとにイスラム法廷で裁かれる犯罪者は、彼の行為が「深刻かつ突然の挑発」への対処であったと認められれば情状酌量を与えられる。このようにして、自分の娘と若い男が「けしからぬ関係」にあるとして二人を殺害した男に対し、ラホール高等裁判所は刑期を無期から5年に減らした。被害者の行動はイスラム国家において許しがたく、一家の父親にとって耐えがたいものであるがゆえに、被告の行為には正当性があると認めたのだった。

 別の事件では、殺人犯が無罪放免となった。これらの判事の一部の心情は、ラホール高等裁判所で開かれたある離婚訴訟の際、一人の判事がジャハンギル弁護士に対して投げつけた罵声にも表れている。「あなたのいるべき場所はここではなく、刑務所だ」

 被害者に有利な判決が出されることもないわけではない。しかし、それは多くの場合に敵意、さらには暴力を誘発する。ジャハンギル弁護士は、離婚訴訟中に裁判所を出たところで襲われた女性達や、一部の者から伝統やイスラムに反すると見られた評決を出したために命を落とした判事達のことを語ってくれた。

法律の改悪
 「問題の激烈さにもかかわらず、政府の対応はよく言っても無関心という態度にとどまった。時には犠牲者の傷口に塩を塗り込むような真似に及んだり、裁判を阻止するようなこともあった」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチが報告している(6)。司法を緊密にコントロールする軍事政権は、この種の事件で民事訴訟を起こすこともできるのに、それもしない。統計が何よりもすべてを雄弁に語っている。逮捕や有罪判決のうち、「名誉の殺人」やカロ・カリはせいぜい一割でしかない。まさに殺人を奨励しているとしか言いようがない。
 ムシャラフ軍事政権は、ともかく幾つかの所信表明を出した。が、それだけである。ある外交官は言う。「状況を変えるには、政府が相当の努力を続けていく必要があります。慣習を打ち破り、国民の教育を推進しなければなりません。社会を根底から変えなければならないのです。しかし、政府にはそういった意志がまったく見られません」。政権に近い一部のイスラム関係者が女性の社会進出を言語道断としているだけに、政府はますます及び腰になる。

 これらのイスラム関係者は、1961年に女性の基本的人権を認めたイスラム家族法の改定さえも要求している。女性の地位向上のための全国委員会のメンバーでもあるシャラ・ジア弁護士が最近述べたように、政府には「名誉の殺人」対策に具体的に取り組むつもりなど、さらさらないのだ。「宗教勢力はあまりにも大きな力を握っているのです」と彼女は強調する。

 ここ20年来のイスラム原理主義の台頭と、(パキスタンの「タリバン化」とも言われる)シャリアの浸透が、女性の運命に深刻な衝撃を与えている。不貞と姦淫は死刑に値すると定めた1979年の政令は、刑法上の犯罪を宗教上の罪に変容させてしまっただけではない。この政令ができたことで部族社会の悪しき伝統が強化された。なかでも、パキスタンで頻繁に起こる強姦事件が処罰されなくなってしまった。立証責任は被害者の側にあるというのである。

 大局的に見れば、一部の政令や命令、法律が女性に対する差別条項を維持しているのは、パキスタン憲法に反している。また、パキスタンも1996年3月に批准した国連女性差別撤廃条約をはじめとする国際協定にも反している。しかし、そうした協定の遵守を求めて立ち上がった人々(市民団体、人道組織、報道機関、弁護士など)は、暴力的な反対キャンペーンの標的にされているのが実状だ。

 現実として、「名誉の殺人」やカロ・カリは相変わらず各地で多発している。ほとんど処罰を受けることがないというわけで、他の犯罪まで覆い隠すようになっている。ラホールの女性組織、シルカット・ガーが、最近起きた次のような事件を例に挙げている。ある村の男が殴り合いで相手を殺した。そのままでは何年も刑務所に放り込まれることになる。父親はそれはまずいと一計を案じ、「おまえの義理の妹を殺しておいで。そうすれば、死んだ男とカロ・カリだったということで済むだろうから」と息子を唆した。

 「もし、パキスタンが文明国家の仲間入りをしたいと願うのであれば、カロ・カリの悪しき伝統を封印しなければならない」と、ごく最近ドーン紙は書いた(7)。しかし、近い将来に実現できる見込みはない。ジャハンギル弁護士は取材の最後に悲しそうに言った。「パキスタンは、まだ人権を尊重することの必要性さえも理解していない国なのです」。ましてや女性の人権などさらに遠い話である。

(i) ル・モンド2001年4月5日付
(1) シャハナズ・ボカリはパキスタン進歩女性協会(The Pakistan Progressive Women Association)の会長で、イスラマバード、ラワルピンディの三つの大きな病院で「1994年以降、この種の事件が4000件以上起こっている」ことを調べ上げた。
(2) パキスタンほど大規模ではないが、一部の中東諸国にも「名誉の殺人」は残っている。特にヨルダン、パレスチナ、イエメンでは毎年数十件報告されている。
(3) No Progress on Woman's Rights, Pakistan, September 1998.
(4) Karachi, 3 January 2001.
(5) Lahore, 6 February 1999.
(6) ヒューマン・ライツ・ウォッチ「犯罪か慣習か、パキスタン女性の受ける暴力」(ニューヨーク、ロンドン、ブリュッセル、1999年8月)
(7) Aziz Malik, << Fighting karo-kari with education >>, Dawn, 3 January 2001.
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