解放された世界

解放された世界 (岩波文庫)
H.G.ウェルズ
岩波書店
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ハーバート・ジョージ・ウェルズ





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H・G・ウェルズ
Herbert George Wells

Herbert George Wells in 1943.jpg
1943年に撮影されたウェルズ


誕生
1866年9月21日
ケント州 ブロムリー

死没
1946年8月13日(満79歳没)
ロンドン

職業
作家

国籍
イギリスの旗 イギリス

主題
小説、随筆、ノンフィクション

文学活動
国際ペンクラブ2代目会長(在任1933年~1936年)

代表作
『タイム・マシン』
『宇宙戦争』
『透明人間』

子供
ジョージ・フィリップ・ウェルズ


影響を受けたもの[表示]





影響を与えたもの[表示]









公式サイト
H.G.ウェルズ協会 (The H.G. Wells Society)
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ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866年9月21日 - 1946年8月13日)は、イギリスの著作家。小説家としてはジュール・ヴェルヌとともに「SFの父」と呼ばれる。社会活動家や歴史家としても多くの業績を遺した。H・G・ウエルズ、H.G.ウェルズ等の表記がある。



目次 [非表示]
1 生涯 1.1 作家以前
1.2 作家活動
1.3 社会活動
1.4 私生活
1.5 晩年、死後

2 作品と影響 2.1 ウェルズが影響を与えた主な人物、作品

3 主要作品リスト 3.1 長篇、中篇小説
3.2 短篇小説
3.3 映画脚本
3.4 思想書、エッセイ、ノンフィクション
3.5 ゲーム
3.6 邦訳された主な著作

4 脚注
5 参考文献
6 関連項目
7 外部リンク


生涯[編集]

作家以前[編集]

イングランドのケント州ブロムリー(現在のブロムリー・ロンドン特別区)の商人の家に生まれる。父ジョゼフ・ウェルズは園丁やクリケット選手としても働き、母サラ・ニールはメイドだった。家庭は下層中流階級に属しており、ウェルズは父の負傷後には母が働いていたアップパーク邸に寄食する。ウェルズはこの館でプラトンの『国家』、トマス・ペインの『人間の権利』、ジョナサン・スウィフトなどを読んだ。この頃、呉服商や薬局の徒弟奉公、見習い教師などを経験するがいずれも続かなかった。当時の体験は、のちに『キップス』、『トーノ・バンゲイ』などの小説に生かされている。

奨学金でサウス・ケンジントンの科学師範学校(Normal School of Science、現インペリアル・カレッジ)に入学。トマス・ヘンリー・ハクスリーの下で生物学を学び、進化論には生涯を通じて影響を受けることになる。学生誌『サイエンス・スクールズ・ジャーナル』に寄稿し、1888年4-6月号に掲載された『時の探検家たち』は、のちの『タイム・マシン』の原型となる。1891年には、四次元の世界について述べた論文『単一性の再発見』が『フォート・ナイトリ・レヴュー』に掲載された。

作家活動[編集]

ウェルズは教員をめざすが、教育界の保守的な体質と病気が原因で道を閉ざされ、文筆活動へ進む。やがてジャーナリストとなり、『ベル・メル・ガゼット』や『ネイチャー』に寄稿する。1890年代から1900年代初頭にかけて、『タイム・マシン』(1895年)をはじめ、『モロー博士の島』、『透明人間』、『宇宙戦争』など現在でも有名な作品を発表する。これら初期の作品には、科学知識に裏打ちされた空想小説が多く、ウェルズ自身は「科学ロマンス」と呼んだ。

1900年、ケント州のサンドゲイトに邸宅を購入し、執筆活動と文士との交際を行なう。未来について考察した『予想』の発表などが転機となり、文明批評色の濃い作品や風俗小説を発表するようになる。やがて社会主義に傾倒し、1902年にはジョージ・バーナード・ショーの紹介で社会主義団体であるフェビアン協会に参加。その後も人類への憂慮を背景にした作品を発表し続け、第一次世界大戦の前に原爆を予見した『解放された世界(英語版)』を発表。終戦後に出された歴史書『世界史大系』は幅広く読まれた。

社会活動[編集]

第一次大戦後、戦争を根絶するために国際連盟の樹立を提唱し、ワシントン会議に出席。『新世界秩序』では、全ての国家に人権の遵守と軍備の非合法化を訴えた。また、母性保護基金、糖尿病患者協会、新百科全書、人権宣言などの運動を行なった(後述)。政治家との交流としては、ウッドロウ・ウィルソンへの直談判、ウラジーミル・レーニン、フランクリン・ルーズベルト、ヨシフ・スターリンとの会見などを行なった。

私生活[編集]

1891年に最初の結婚をし、1895年に教え子だったアミー・キャサリン・ロビンズと再婚。アミー・キャサリンとの間に長男ジョージ・フィリップ、次男フランク・リチャードが生まれた。ウェルズは女性遍歴で知られ、ときに非難も受けた。交際相手としては、産児制限活動家のマーガレット・サンガー、小説家のエリザベス・フォン・アーニム、フェビアン協会のメンバーアンバー・リーヴス、作家のレベッカ・ウェスト、オデット・カーン、マリア・ブドゥベルグらが知られている。またチャールズ・チャップリンとは懇意にしており、自作『来るべき世界』の映画化においては助言を求めた。

晩年、死後[編集]

教員を目指していた頃に肺をわずらった他、生涯を通して糖尿病、腎臓病、神経炎などさまざまな疾患と戦い、ロンドンの自宅にて肝臓ガンにより逝去。フォレスト・J・アッカーマンによれば、晩年のウェルズは、自作の題名を部屋につけており、アッカーマンは「海の貴婦人」の間でウェルズと会見をした[1]。

死後、1960年にH.G.ウェルズ協会が設立された。その後に再評価がすすみ、1986年にはパトリック・パリンダーの主導によりウェルズ国際シンポジウムが実現。『モロー博士の島』や『宇宙戦争』の詳細な注釈書も出版された。『タイム・マシン』をはじめとしてウェルズの作品は幾度も映像化されている(外部リンク参照)。日本においては、日本ウェルズ協会が1974年に設立。会長は今西錦司だった。

作品と影響[編集]
サイエンス・フィクション後世でもよく扱われるSF的題材を数多く生み出し、また発展させた事で評価を得ている。タイムマシンをはじめ、蛸型の火星人、透明人間などが広く知られている。その他にも動物の知性化(『モロー博士の島』)、テロの道具としての細菌(『盗まれた細菌』)、合成食品(『神々の糧』)、反重力(『月世界最初の人間』)、新兵器(『陸の甲鉄艦』『空の戦争』『解放された世界(英語版)』)などがある。ユートピア自身のユートピア観をもとにした小説を著した。なかでも『近代のユートピア』の内容は論争を呼び、当時G・K・チェスタトンやE・M・フォースターらはウェルズを批判し、ヘンリー・ジェイムズやジョゼフ・コンラッドらはウェルズを擁護した[2]。女性像『アン・ヴェロニカの冒険』では、女性の自由恋愛や、性愛について話す女性を描き、エドワード朝時代の常識に挑戦する内容として非難された。ゲームウェルズは、現在ミニチュアゲームと呼ばれるような遊びを題材とした Floor Games や Little Wars を著しており、ウォー・ゲームの商品化の先駆者としても知られる。原子爆弾小説『解放された世界』は、原子核反応による強力な爆弾を用いた世界戦争と、戦後の世界政府誕生を描いた。核反応による爆弾は、原子爆弾を予見したとされる。ハンガリー出身の科学者レオ・シラードは、この小説に触発されて核連鎖反応の可能性を予期し、実際にマンハッタン計画につながるアメリカの原子爆弾開発に影響を与えた。国際連盟第一次世界大戦中に論文『戦争を終わらせる戦争』を執筆。大戦後に戦争と主権国家の根絶を考え、国際連盟を樹立すべく尽力した。しかし、結果的に発足した国際連盟はウェルズの構想とは異なり国家主権を残していたため、『瓶の中の小人』という論文で国際連盟を批判している。のちに発足した国際連合も同様に批判した。新百科全書運動世界平和の基盤となる新世界秩序のための知識と思想の集大成として、1920-30年代に新百科全書運動を展開する。これに関する著書『世界の頭脳』においては、書籍の形態をとらない世界規模の百科事典を構想し、現在のウィキペディアの構造を予言していたとも言われる。糖尿病患者協会1934年、糖尿病患者協会の設立を『タイムズ』紙上で国民に呼びかけ、国家規模での糖尿病患者協会が初めて設立された(糖尿病患者協会そのものはポルトガルが世界初)。ウェルズ自身は1型糖尿病を患っていた。人権宣言第二次世界大戦の勃発に触発され、1939年にウェルズは『新世界秩序』で概略を述べていた「人権宣言」についての書簡を『タイムズ』とルーズベルトに送る。この人権宣言と、それを基に1940年に作成されたサンキー権利章典は、1941年1月6日のルーズベルトの一般教書の中の「四つの自由」を包含しており、さらにのちの世界人権宣言などに影響を与えたとされる。日本国憲法ウェルズは日本国憲法の原案作成に大きな影響を与えたとされる。特に日本国憲法9条の平和主義と戦力の不保持は、ウェルズの人権思想が色濃く反映されている。しかし、ウェルズの原案から日本国憲法の制定までに様々な改変が行われたため、憲法9条の改正議論の原因のひとつとなっている。またこの原案を全ての国に適用して初めて戦争放棄ができるように記されており、結果として日本のみにしか実現しなかったことで解釈に無理が生じたと言われている[3]。
ウェルズが影響を与えた主な人物、作品[編集]
ホルヘ・ルイス・ボルヘス - 『タイム・マシン』から着想を得た評論『コールリッジの夢』や、『水晶の卵』に着想を得た『アレフ』を執筆。ボルヘスが編纂した叢書〈バベルの図書館〉の1冊にもウェルズが選ばれている。
オラフ・ステープルドン - 『世界史大系』から着想を得た年代記『最後と最初の人間』を執筆。
オーソン・ウェルズ - 『宇宙戦争』から着想を得たラジオ番組『宇宙戦争 (ラジオ)』を制作。
C・S・ルイス - 『別世界物語』において、ウェルズのカリカチュアである科学者を登場させた。
A・A・ミルン - 子供時代にウェルズの教えを受け、当時のウェルズについて自伝で回想している。
アーサー・C・クラーク - 『めずらしい蘭の花が咲く』から着想を得た『尻込みする蘭』や、『月世界最初の人間』から登場人物の名を借りた『登ったものは』を執筆(『白鹿亭綺譚』所収)。
アーノルド・J・トインビー - 『世界史大系』から着想を得た『歴史の研究』を執筆。
ジョン・クリストファー - 『宇宙戦争』から着想を得た『三本足シリーズ』を執筆。
クリストファー・プリースト - 『タイム・マシン』と『宇宙戦争』から着想を得た『スペース・マシーン』を執筆。
K・W・ジーター - 『タイム・マシン』から着想を得た Morlock Night を執筆。
ジーン・ウルフ - 『モロー博士の島』を子供時代に愛読し、のちに『デス博士の島その他の物語』を執筆。
ブライアン・W・オールディス - 『モロー博士の島』から着想を得た Moreau's Other Island を執筆。また『十億年の宴』ではウェルズの作品を論じている。
横田順彌 - 『宇宙戦争』から着想を得た『火星人類の逆襲』を執筆。
スティーヴン・バクスター - 『タイム・マシン』をはじめいくつかのウェルズ作品から着想を得た『タイム・シップ』を執筆。この小説は、ウェルズの遺族から『タイム・マシン』の正式な続編と認められている。

主要作品リスト[編集]

※H. G. Wells bibliographyも参照。

長篇、中篇小説[編集]
The Time Machine (1896) 『タイム・マシン』(その他の邦題『八十万年後の社会』)
The Wonderful Visit (1895) 『驚異の訪れ』
The Island of Dr. Moreau (1896) 『モロー博士の島』(その他の邦題『改造人間の島』)
The Invisible Man (1897) 『透明人間』
The Wheels of Chance (1897) - 自転車旅行を題材としたコメディ
The War of the Worlds (1898) 『宇宙戦争』
When The Sleeper Awakes (1899) 『今より三百年後の社会』 - 眠りによって未来のディストピアに出現した男の体験談
Love and Mr. Lewisham (1900) 『恋愛とルイシャム氏』 - 交霊術に関わった男の物語
The First Men In the Moon (1901) 『月世界最初の人間』(その他の邦題『月の世界を見た男』『月世界旅行』)
The Sea Lady (1902) 『海の貴婦人』
The Food of the Gods (1904) 『神々の糧』 - 合成食品による生物の巨大化を描く
Kipps (1905) 『キップス』 - 風俗小説
A Modern Utopia (1905) 『近代のユートピア』 - ウェルズ流のユートピア
In the Days of the Comet (1906) 『彗星の時代』 - ハレー彗星の接近に着想を得た物語
The War in the Air (1908) 『空の戦争』 - 航空機を用いた戦争を描いた
Ann Veronica (1909) 『アン・ヴェロニカの冒険』(その他の邦題『恋愛新道』) - 女性の性解放を題材とした恋愛小説
Tono-Bungay (1909) 『トーノ・バンゲイ』 - 風俗小説
The History of Mr. Polly (1910) 『ポーリー氏の生涯』 - 自伝的な風俗小説
The New Machiavelli (1911) 『ニュー・マキャベリ』 - 社会主義を題材とした小説
Marriage (1912) 『結婚』
The Passionate Friends (1913) 『情熱的な友人たち』 - 三角関係を描いた恋愛小説
The World Set Free (1914) 『解放された世界』 - 原子力兵器の出現と核戦争の到来を予見
Wife of Sir Isaac Harman (1914) 『アイザック・ハーマン卿の妻』
Bealby: A Holiday (1915)
The Research Magnificent (1915) 『崇高な探究』
The Soul of a Bishop (1917)
Joan and Peter: A Story of an Education (1918)
The Undying Fire (1919)
The Secret Places of the Heart (1922)
Men Like Gods (1922) 『神のような人々』 - ユートピア的な平行世界の体験記
The Dream (1924) - 科学ロマンスと社会小説の中間的作品
Christina Alberta's Father (1925)
The World of William Clissold (1926) 『ウィリアム・クリソルド氏の世界』
Meanwhile (1927)
Mr Blettsworthy on Rampole Island (1928)
The King Who Was a King (1929)
The Autocracy of Mr Parham (1930)
The Bulpington of Blup (1932)
The Shape of Things to Come (1933) 『世界はこうなる』(その他の邦題『地球国家2106年』) - 未来を扱った架空の年代記
The Croquet Player (1936) 『クローケー・プレーヤー』
Brynhild (1937)
Star Begotten (1937) - 火星人を題材とした作品
The Camford Visitation (1937)
Apropos of Dolores (1938)
The Brothers (1938)
The Holy Terror (1939)
Babes in the Darkling Wood (1940)
All Aboard for Ararat (1940)
You Can't Be Too Careful (1941)

短篇小説[編集]
A Family Elopement (1884)
A Tale of the Twentieth Century (1887)
A Talk with Gryllotalpa (1887)
A Vision of the Past (1887)
The Chronic Argonauts (1888) 『時の探検家たち』 - 『タイム・マシン』の原型
The Devotee of Art (1888) 『芸術崇拝』
The Flying Man (1893)  『飛ぶ男』
The Stolen Bacillus (1894) 『盗まれた細菌』(その他の邦題『盗まれたバチルス』)
The Final Men (1894)
The Flowering of the Strange Orchid (1894) 『めずらしい蘭の花が咲く』(その他の邦題『奇妙な蘭』)
A Deal in Ostriches (1894) 『ダチョウの売買』(その他の邦題『駝鳥買います』)
The Hammerpond Park Burglary (1894)
The Diamond Maker (1894) 『ダイヤモンドをつくる男』(その他の邦題『ダイヤモンド製造家』、『ダイヤモンド造り』、『ダイヤモンド作り』)
How Gabriel Became Thompson (1894)
In the Avu Observatory (1894)
In the Modern Vein: An Unsympathetic Love Story (1894) 『ある無情な恋物語』
The Jilting of Jane (1894)
The Lord of the Dynamos (1894) 『ダイナモの神』(その他の邦題『発電機殿』、『発電機の神さま』)
Aepyornis Island (1894) 『イーピヨルスの島』(その他の邦題『怪鳥イーピヨルニスの島』、『怪鳥エピオルニス』)
The Man With a Nose (1894)
A Misunderstood Artist (1894)
The Thing in No. 7 (1894)
Through a Window (1894)
The Thumbmark (1894)
The Treasure in the Forest (1894) 『森の中の宝』
The Triumphs of a Taxidermist (1894) 『剥製師の手柄話』
The Argonauts of the Air (1895) 『大空の冒険家たち』(その他の邦題『空中飛行家』)
A Catastrophe (1895)
The Cone (1895) 『溶鉱炉』(その他の邦題『コーン』)
How Pingwell Was Routed (1895)
Le Mari Terrible (1895)
The Moth (1895) 『蛾』
Our Little Neighbour (1895)
Pollock and the Porroh Man (1895) 『ポロ族の呪術師』
The Reconciliation (1895)
The Remarkable Case of Davidson's Eyes (1895) 『デイヴィドソンの不思議な目』(その他の邦題『ダヴィドソンの眼の異様な体験』)
The Temptation of Harringay (1895)
Wayde's Essence (1895) 『ウェイドの正体』
The Apple (1896) 『林檎』
In the Abyss (1896) 『深海潜航』
The Plattner Story (1896) 『プラトナーの話』(その他の邦題『プラットナー先生綺譚』)
The Rajah's Treasure (1896)  『マハラジャの財宝』
The Red Room (1896) 『赤い部屋』(その他の邦題『赤の間』)
The Sea Raiders (1896) 『海からの襲撃者』(その他の邦題『海を襲うもの』)
A Slip Under the Microscope (1896) 『すべったプレパラート』
Under the Knife (1896) 『手術を受けて』
The Story of the Late Mr. Elvesham (1896) 『故エルヴシャム氏の話』(その他の邦題『亡きエルヴシャム氏の物語』)
The Purple Pileus (1896) 『紫色のキノコ』(その他の邦題『赤むらさきのキノコ』)
The Crystal Egg (1897) 『水晶の卵』(その他の邦題『卵形の水晶球』、『謎の水晶』)
Le Mari Terrible (1897)
The Ghost of Fear (1897)
The Lost Inheritance (1897)
Mr Marshall's Doppelganger (1897)
A Perfect Gentleman on Wheels (1897)
The Presence by the Fire (1897)
The Star (1897) 『星』(その他の邦題『妖星』、『ザ・スター』)
A Story of the Days To Come (1897) 『来たるべき世界の物語』(その他の邦題『近い将来の物語』)
A Story of the Stone Age (1897) 『みにくい原始人』
The Stolen Body (1898) 『盗まれた肉体』(その他の邦題『盗まれた身体』)
Mr. Leadbetter's Vacation (1898)
Jimmy Goggles the God (1898)
The Man Who Could Work Miracles (1898) 『奇蹟を行う男』(その他の邦題『今の世の奇蹟』、『奇跡をおこさせる男』、『奇跡を起こせた男』、『奇蹟を起した男』)
Miss Winchelsea's Heart (1898)
Walcote (1898) 『ウォルコート』
Mr Brisher's Treasure (1899) 『ブリシャー氏の宝』
A Vision of Judgment (1899) 『審判の日』
A Dream of Armageddon (1901) 『世界最終戦争の夢』(その他の邦題『世界終末戦争の悪夢』)
Mr. Skelmersdale in Fairyland (1901) 『妖精の国のスケルマーズデイル君』
Filmer (1901) 『イカロスになりそこねた男』
The New Accelerator (1901) 『新加速剤』(その他の邦題『新神経促進剤』)
The Inexperienced Ghost (1902) 『不案内な幽霊』
The Loyalty of Esau Common (1902)
The Valley of Spiders (1903) 『蜘蛛の谷』
The Truth About Pyecraft (1903) 『パイクラフトの真相』(その他の邦題『パイクラフトの話』)
The Magic Shop (1903) 『魔法の店』(その他の邦題『魔法屋』、『魔法の園』)
The Land Ironclads (1903) 『陸の甲鉄艦』 - 戦車の原型的な兵器が登場する
The Country of the Blind (1904) 『盲人の国』(その他の邦題『盲人国』、『王様になりそこねた男』)
Empire of the Ants (1905) 『アリの帝国』
The Door in the Wall (1906) 『塀にある扉』(その他の邦題『塀についた扉』、『白壁の緑の扉』、『塀とその扉』、『くぐり戸』、『くぐり戸の中』)
The Beautiful Suit (1909) 『美しい服』
Little Mother Up the Morderberg (1910)
My First Aeroplane (1910) 『わたしの初めての飛行機』
The Obliterated Man (1911)
The Sad Story of a Dramatic Critic (1915)
The Story of the Last Trump (1915) 『最後のらっぱの物語』
The Wild Asses of the Devil (1915)
Peter Learns Arithmetic (1918)
The Grizzly Folk(The Grisly Folk) (1921) 『消えた旧人類』
The Pearl of Love (1924) 『愛の真珠』
The Queer Story of Brownlow's Newspaper (1932) 『ブラウンローの新聞』(その他の邦題『『未来新聞』)
Answer to Prayer (1937)
The Country of the Blind (revised) (1939)

映画脚本[編集]
Things to Come (1935) - 原作『世界はこうなる』および『人間の仕事と富と幸福』
The Man Who Could Work Miracles (1936) - 原作『奇蹟を行う男』
The New Faust (1936) - 原作『故エルヴシャム氏の話』

思想書、エッセイ、ノンフィクション[編集]
The Rediscovery of the Unique (1891) 『単一性の再発見』
Text-Book of Biology/Zoology (1893) - 教科書
Honours Physiography (1893) - 共著
Certain Personal Matters (1897)
Anticipations of the Reactions of Mechanical and Scientific Progress upon Human Life and Thought (1901) 『予想』 - 科学の進歩が人間に与える影響について述べたもの
Mankind in the Making (1903)
The Future in America (1906)
This Misery of Boots (1907) 『この惨めな靴』 - 資本主義と社会主義について
Will Socialism Destroy the Home? (1907)
First and Last Things (1908) 『最初と最後のもの』
The Great State (1912) 『社会主義と偉大な国家』
Great Thoughts From H. G. Wells (1912)
Thoughts From H. G. Wells (1912)
New Worlds for Old (1913) 『古きものに代わる新しい世界』 - 社会主義運動の紹介
The War That Will End War (1914) 『戦争を終わらせる戦争』
An Englishman Looks at the World (1914)
The War and Socialism (1915)
The Peace of the World (1915)
Mr Britling Sees It Through (1916) 『ブリトリング氏は考察する』(その他の邦題『ブリットルの明察』)
What is Coming? (1916)
The Elements of Reconstruction (1916)
God the Invisible King (1917)
War and the Future (1917)
Introduction to Nocturne (1917)
In the Fourth Year (1918)
The Idea of a League of Nations (1919) 『国際連盟の思想』 – 国際連盟についての序論。エドワード・グレイ、ジェームズ・ブライスらとの共著
The Way to the League of Nations (1919) 『国際連盟への道』 – 国際連盟の創設に必要な措置について。エドワード・グレイ、ジェームズ・ブライスらとの共著
The Outline of History (1920) 『世界史大系』(その他の邦題『世界文化史大系』『世界文化史』等) - 宇宙の誕生から人類の誕生までを記した歴史書
Russia in the Shadows (1920) 『影のなかのロシア』 - ソヴィエト連邦の訪問記。友人のマクシム・ゴーリキーを訪れ、レーニンと会見
Frank Swinnerton (1920) – 共著
The Salvaging of Civilization (1921) 『文明の救済』 - アメリカ講演用の原稿が原型。新しい社会経済秩序の思想について
A Short History of the World (1922) 『世界史概観』(その他の邦題『世界文化小史』) - 『世界史大系』の縮約版
The Story of a Great Schoolmaster (1924) - Frederick William Sandersonの伝記
A Year of Prophesying (1925)
A Short History of Mankind (1925)
Mr. Belloc Objects to the "Outline of History" (1926)
Wells' Social Anticipations (1927)
The Way the World is Going (1928)
The Book of Catherine Wells (1928)
The Open Conspiracy (1928) 『誰でも参加できる陰謀』(その他の邦題『公開謀議』) - 国家の消滅などユートピア的な未来について述べたもの
The Science of Life (1930) 『生命の科学』 - 生物学や進化論についての本。ジュリアン・ハクスリー、ジョージ・フィリップ・ウェルズとの共著
Divorce as I See It (1930)
Points of View (1930)
The Work, Wealth and Happiness of Mankind (1931) 『人間の仕事と富と幸福』 - 政治経済学についての本。ハロルド・ラスキやジョン・メイナード・ケインズの協力を得て執筆
The New Russia (1931)
After Democracy (1932)
An Experiment in Autobiography: Discoveries and Conclusions of a Very Ordinary Brain (since 1866) (1934) 『自伝の試み』 - 自叙伝。自伝文学の白眉と評価されている
The New America: The New World (1935)
The Anatomy of Frustration (1936) 『欲求不満の分析』
My Auto-Obituary (1936) - 自身の死亡広告
World Brain (1938) 『世界の頭脳』 - 新世界百科事典の構想。1936-38年の講演集
The Fate of Homo Sapiens (1939) 『人類の運命』
The New World Order (1939) 『新世界秩序』 - 人権、戦争根絶などについての持論を述べたもの
Travels of a Republican Radical in Search of Hot Water (1939)
The Rights of Man, Or What Are We Fighting For? (1940) 『人間の権利—われわれはなんのためにたたかうのか』
Guide to the New World (1941)
The Conquest of Time (1941) 『時間の征服』
The Outlook for Homo Sapiens (1942) 『ホモ・サピエンス将来の展望』 - 『人類の運命』と『新世界秩序』を1冊に再編集したもの
Modern Russian and English Revolutionaries (1942) – Lev Uspenskyとの共著
Phoenix: A Summary of the Inescapable Conditions of World Reorganization (1942)
Crux Ansata: An Indictment of the Roman Catholic Church (1943)
‘42 to ‘44: A Contemporary Memoir (1944) 『世界革命の危機における人間の取った行為に関する現代の回顧録 1942-1944』
Reshaping Man's Heritage (1944) – J・B・S・ホールデン、ジュリアン・ハクスリーとの共著
The Happy Turning (1945)
Mind at the End of its Tether (1945) 『行きづまった精神』
Marxism vs Liberalism (1945) – ヨシフ・スターリンとの共著

ゲーム[編集]
Floor Games (1911)
Little Wars (1913)

邦訳された主な著作[編集]
小説『タイム・マシン』、『宇宙戦争』、『透明人間』『月世界最初の人間』の翻訳については各項目を参照。
『今より三百年後の社会』黒岩涙香訳、1912-13年。
『今の世の奇蹟』黒岩涙香訳、1918年。
『ダイヤモンドをつくる男・盲人の国』 窪田鎮夫訳、英宝社、1957年。
『トーノ・バンゲイ(上下)』 中西信太郎訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1953-60年、ISBN 4003227654
『来たるべき世界の物語』 宇野利泰他訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1961年。
『ウェルズSF傑作集 1』 阿部知二他訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1965年。
『ウェルズSF傑作集 2』 阿部知二他訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1970年。
『モロー博士の島』 宇野利泰訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1977年。
『神々の糧』 小倉多加志訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1979年。
『神々のような人々』 水嶋正路訳、サンリオ〈サンリオSF文庫〉、1981年。
『ザ・ベスト・オブ・H・G・ウエルズ』 浜野輝訳、サンリオ〈サンリオSF文庫〉、1981年。
『白壁の緑の扉』 小野寺健訳、国書刊行会〈バベルの図書館〉、1988年。 - 編纂、序文はホルヘ・ルイス・ボルヘス。
『アン・ヴェロニカの冒険』 土屋倭子訳、国書刊行会、1989年。
『モロー博士の島 他九篇』 橋本槙矩・鈴木万里訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1993年。
『解放された世界』 浜野輝訳、岩波書店〈岩波文庫〉、1997年、ISBN 4003227662
『地球国家2106年』 吉岡義二訳、読売新聞社、1973年。
『モロー博士の島』 中村融訳、東京創元社〈創元SF文庫〉、1996年。
『イカロスになりそこねた男』 橋本槙矩他訳、ジャストシステム、1996年。
『盗まれた細菌』/『初めての飛行機』 南條竹則訳、光文社古典新訳文庫、2010年。



その他『世界文化史大系』(全12冊) 北川三郎訳、大鎧閣、1927年。
『生命の科学』(全24冊) 小野俊一訳、平凡社、1946年。
『世界文化史』(全8冊) 藤本良造訳、新潮社〈新潮文庫〉、1957年。
『人間の仕事と富と幸福』 浜野輝訳、鹿島研究所出版会、1967年。
『世界文化小史』 下田直春訳、角川書店〈角川文庫〉、1971年。
『影のなかのロシア』 浜野輝訳、みすず書房、1978年。
『世界史概観(上下)』 長谷部文雄・阿部知二訳、岩波書店〈岩波新書〉、1966年。
『ホモ・サピエンス将来の展望I 人類の運命』 浜野輝訳、思索社、1983年。
『ホモ・サピエンス将来の展望II 新世界秩序』 浜野輝訳、思索社、1983年。 - 巻末にウェルズ協会による著作目録付き
『世界の頭脳』 浜野輝訳、思索社、1987年。

脚注[編集]

1.^ 荒俣宏「H・G・ウエルズ 拡大する小説家」(『モロー博士の島』 宇野利泰訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1977年、287頁)
2.^ 荒俣宏「ウエルズのふしぎな系譜学」(『タイム・マシン』 宇野利泰訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、1978年、306頁)
3.^ 浜野輝「ウェルズと日本国憲法」(『解放された世界』岩波文庫版、1997年)

参考文献[編集]
ノーマン&ジーン・マッケンジー 『時の旅人 H.G.ウェルズの生涯』 村松仙太郎訳、早川書房、1978年。
橋本槙矩他 『裂けた額縁 H・G・ウェルズの小説の世界』 英宝社、1993年、 ISBN 4269710470
岩波文庫版『トーノ・バンゲイ(下)』解説
岩波文庫版『タイム・マシン』解説
岩波文庫版『解放された世界』著者紹介「ハーバート・ジョージ・ウェルズ」、リッチー・カルダーによる序説、ウェルズによる序文、浜野輝「ウェルズと日本国憲法」、付録「人権宣言」「サンキー権利宣言」
荒俣宏「H・G・ウエルズ 拡大する小説家」(ハヤカワ文庫版『モロー博士の島』解説)
荒俣宏「ウエルズのふしぎな系譜学」(ハヤカワ文庫版『タイム・マシン』解説)
ブライアン・オールディス 『十億年の宴』 浅倉久志訳、東京創元社、1980年。 - ウェルズについて論じた章がある

関連項目[編集]
Category:透明人間
火星人
タイムマシン
ジョージ・フィリップ・ウェルズ
デイヴィッド・ロッジ『絶倫の人 小説H・G・ウェルズ』(高儀進訳、白水社、2013年9月)、オマージュにみちた伝記

外部リンク[編集]

ウィキメディア・コモンズには、ハーバート・ジョージ・ウェルズに関連するカテゴリがあります。
H.G.ウェルズ協会 (The H.G. Wells Society)(英語)
プロジェクト・グーテンベルクにおけるH. G. Wellsの作品(英語)
Works by H. G. Wells at Internet Archive(オリジナル版のスキャン画像有。英語)
ウェルズ ハーバート・ジョージ:作家別作品リスト(青空文庫)
H. G. Wells - Internet Speculative Fiction Database(英語)
ハーバート・ジョージ・ウェルズ - インターネット・ムービー・データベース(英語) - 映像化作品のリスト
H・G・ウェルズ(翻訳作品集成)
小さな巨人(若島正による解説)

http://user.keio.ac.jp/~ua947285/publications/sample-worldset.html

H・G・ウェルズ「解放された世界」書評


[版権表示]
ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866?1946)
イギリスの作家。ヴェルヌと並んで「The Father of Science Fiction」と評されるが、その業績はSFのみに限られず、評論やノンフィクションの分野でも有名である。代表作はSFなら「タイムマシン」や「モロー博士の島」、ノンフィクションなら「Anticipations of the Reactions of Mechanical and Scientific Progress upon Human Life and Thought」や「The Outline of History」など。

本作は旧態依然とした社会体制からの解放の物語である。

この解放は大科学者ホルステンが原子力エンジンを1953年に実用化したことに始まる。このホルステン=ロバーツ・エンジンは革命的と言えるほどに安価な電力供給を可能にし、わずか数年で既存の動力を全て駆逐する。その一方で、この急激な変化は既存の経済や産業に大きな打撃を与え、この経済的混乱の最中の1956年、世界は全面戦争へと突入していくのである。この戦争に決着を付けたのは他ならぬ原子爆弾である。このカロリウムを原料とする原子爆弾は全世界の200もの都市に落とされ、ほとんどの国家は壊滅状態に陥ってしまう。そしてこの地球規模の破局の閉幕として、イタリアの片田舎で各国の指導者が集まり、世界政府の樹立を宣言する。ここまでで大体この物語の半分である。

この簡素なストーリーだけを読んだら「さぞ、その世界政府とやらは復興やら統治やらに苦労するのだろう、後の半分にはその苦闘と勝利の歴史が書き連ねてあるのだろう。」と思うことであろう。しかしながら、実際にはこの統一政府は困難らしい困難にほとんど遭うこともなく、いともたやすく新しい世界秩序を構築するのである。しかも単なる復興ですら一苦労であるのに、世界政府は20年足らずで世界をユートピアにしてしまうのである。具体的に見てみよう。世界政府が確立したユートピアにおいては、英語をベースとした国際語が通用し、世界法が施行され、世界規模の一般教育制度が実現し、暦や度量衡も統一されている。貧困と無知が横行した古い農場は一掃され、近代的で清潔な少数の人々が運営する農場で世界の食糧は賄われるようになる。この新世界を統治するのは終身の政治家からなる評議会である。この政治家は5年ごとに世界を10の選挙区に分けて行われる普通選挙によって、500人ずつ新たに選出される。変わるのはこうした制度的側面に留まらない:


世界中の人々が突然作り始めたのだ。最初のころは主に美術的な創作活動が盛んであった〔中略〕我々の大半が芸術家なのだ。もはやこの世界における活動の大部分は必需品の生産には向けられておらず、むしろその精密化や装飾、洗練に注がれている。

H・G・Wells「The World Set Free」より抄訳

ここまでくると、少し待ってくれといいたくなる。原子爆弾が発明され、その結果全面核戦争を招き国家が滅びる、ここまではまあよかろう。だが、それで世界政府が樹立され、理想郷が現実のものとなり、人々は労働から解放され今や創造的な活動に邁進するようになる……なぜ?単純に考えたら、このような変化には何の必然性もなく、「突然全ての国が戦争の無益さを悟って自発的に武器を捨て、世界に平和が訪れた」程度の現実味しかない。しかし、ウェルズはこれを一つの歴史的必然だというのである:


基本的に、ブリサーゴ評議会の仕事は、その速度を増して急速に発展していた人類の知識が与えた新たな足場に社会機構を打ち立てることであった。評議会は海難救助探索のように急いで招集され、そして難破船に突き当たったのだが、その船たるやまったく修復不能なものであったのだ。この場合の唯一の可能性は、これまで人類が非常に苦労して抜け出してきた農業世界の野蛮さに逆戻りするか、人類が確立してきた科学を新しい社会秩序の基礎として受け入れるかのどちらかしかなかったのだ。猜疑、ねたみ、排他主義、戦争といった古い時代にありがちな人間の性質は、冷徹な科学の論理が作り上げた新しい機器が持つ途方もなく強大な破壊力と両立することはできなかったのである。〔中略〕遅かれ早かれ人類はこの選択を迫られただろう。

同上。

注意して読むとここにはありがちな誤解がいくつかあることに気がつく。

一つ、仮に科学に根ざした新しい生活と古い野蛮な生活の対立があったのだとしても、ウェルズの時代にそのような対立に直面していたのはほんの一握りの人でしかなかった。そもそも現在ですら、世界の全ての人々が科学の恩恵を受けた生活をしているとは言いがたく、現にサハラ以南のアフリカなどに目をむければ、きちんと整備された鉄道や安定した電気供給といったものを獲得しようと悪戦苦闘している地域がざらにあるのである。数十年以上前となれば、いうまでもなかろう。

つまるところ、新たな社会を打ち立てられるだけの文明的基礎が全ての国や地域に存するわけではない以上、科学的な理想社会への大移行が起こったとしても、その移行は世界の一部の地域に限られることになる。もしウェルズが言うように「世界の広大な地域や幅広い階層の人々が、世界の中でも先進の集団と異なる文明段階にいるうちは、世界の真の社会的安定や人類全体の幸福といったものは存在しえない」ならば、やはり今日の世界においてもなお、本書に描かれたユートピアが実現する見込みはないのである。

二つ、世界はあんがいしぶとい。現状の世界がこのまま行けば崩壊するという考えに取り付かれるのは、インテリやアジテーターにとって職業病のようなものだと言ってもいいだろう。というのは、彼らは理念を明確に保持しているために、理想との対比において現実を過度に低く評価してしまいがちになるからである。このような人々の例には事欠かない。例えば、第二次対戦前には、ウェルズのようにこの古びきった社会体制はもう長くないだろうと考えていた者に加え、混血による社会の退廃を嘆く人種差別主義者どもや、共産主義社会への移行を心から信じる共産主義者がいたし、ドイツではちょび髭の元画家が同じような論法で民衆を沸き立たせていた。冷戦期には全面核戦争の恐怖が娯楽小説のテーマとなるほどに浸透し、技術革新によって何度も肩透かしを食らいつつも石油枯渇論は30年以上たったいまでも叫ばれている。そして、現在は地球温暖化に代表される環境問題が世界を揺るがしている。

これらの主張が全て、集団的パラノイアに過ぎないと言うつもりは無いが、少なくともウェルズの主張は過度なペシミズムであったと言って差し支えはなかろう。事実、当時の法制度や社会制度は、大規模な改修を何度も受けつつも、本書の執筆から80年以上たった現在まであらかた連綿と続いており、その破綻としての大戦争といったものは??いまのところ??起きてはいない。

しかし一方で、このような誤りにもかかわらず、本書の予言は実は正しかったのかもしれない。ただし、ウェルズが考えていたような数十年という短いスパンではなく、数百年という長期的な視点で見ればの話だが。例えば、予言の一つである国際語をとってみよう。この効率的な統一言語という思想は現在ではほとんど消えうせてしまったが、世界的に見れば言語の数は減少傾向にあると言われている。言語学者によってその予測の幅は大きくことなり、また一般にそれほど確かな予測とは言えないのだが、次の百年で半分になるといった予測も存在する。要するに、これらの傾向が今後数百年続いていけば、いずれ少数の国際語だけが残るのではないだろうか?同じことが農業についても言える。農業の機械化と効率化は、今やその速度を増して進みつつある。もしかしたら、西暦2200年には農業は人間の仕事ではなくなるかもしれない。

もちろん、このような変化はウェルズの描くような楽園を約束するわけではない。なぜならば、これらの流れを押し進めているのは主に、人類愛や科学的良識といったものとは無関係な「経済的要求」だからだ。ゆえにこの先にハクスリーの描くような「すばらしき新世界」が待っている可能性も十分にあり、どこに人類が行き着くのかは、結局はその時になってみないとわからない。そしてまさに、その遠い未来の可能性を書いた物の一つとして、本書は現代でもなお、意味を持ち続けているのである。


top » publications » HORIZM33 » H・G・ウェルズ「解放された世界」書評

http://www.gutenberg21.co.jp/worldSF.htm

「解放された世界」
H・G・ウェルズ/水嶋正路訳

ドットブック版 210KB/テキストファイル 172KB

600円

世界の権力志向国家はそれぞれのエゴから、二大陣営にわかれて再び地球規模の戦争状態を引き起こす。そのとき、すでに手にしていた最新の武器である核兵器を使用するのは、当然のなりゆきでもあった。世界の大都市が荒れすさみ瓦礫と化すなかから、ようやく一群の目ざめた人びとが立ち上がり、新しい秩序の形成を求めてスイスのブリサーゴに会する……第一次世界大戦勃発直前の1914年に書かれた本書は、遠く1950年代に舞台を設定し、驚くべき洞察力で未来戦争を描いたSF巨編だ。
立ち読みフロア

 さらにパリに接近すれば、警察の非常線にぶつかったことだろう。家にもどろうとする人びと、家にもどって「危険区域内」から大切な品物を救いだそうとする必死の人びとを食いとめようとする非常線である。
「危険区域」は、かなりでたらめに決めてあった。たとえ非常線を通過して中に入ることを許されても、ここは、やはり轟音がひびき、たえず雷鳴のような音がとどろき、奇妙な紫がかった赤い光がさして、放射性物質の絶え間ない爆発のために、ふるえ、ゆれつづけているのであった。ビルディングが幾区画も全体的に燃え立って猛烈な火を吹きだしていたが、そのふるえる火勢も、背後のネットリとした真紅の光とくらべると、青白い亡霊のようにしか映らなかった。燃えつきた他の大建築の殻が、黒い窓跡を何列もひらいて、赤いモヤを背景にして、いくつもそびえ立っている。一歩すすめば、活火山の火口のなかへ一歩おりていくほどの危険がある。煮えたぎり、旋回する原子爆弾落下地点は、意外なときに、場所を移動したり、新しい土地にもぐりこんでいったりして爆発する。そのたびに、吹きあげられる土の固まりや排水管、石や煉瓦などが、いつ頭の上に飛んでくるともしれないし、いつ足元の地面が火の墓をひらかないともかぎらない。こういう破壊地域に入りこんでいって、さいわい命を落とさずにすんだ者でも、もう一度冒険を繰りかえそうとする者はほとんどなかった。発光性の放射性蒸気が噴きだして、それが時に、爆弾落下地点から数十マイル流れていって、これに触れた人を皆殺しにしたり、火傷させたりしたという話がいくつも伝えられている。パリの爆心地に発生した最初の大火災は、西へひろがり、海への距離の中程にまで達したのである。
 さらに、この赤い光に照らされる廃墟の地獄のような中心部では、空気が変に乾燥していて、火ぶくれを発生させる性質があり、そのために皮膚や肺が痛み、これがまた、なかなか直らないのであった。
 これが、パリの最後の様相であり、これを、もっと大規模にしたのが、シカゴの状態だった。そして、同じ運命が、ベルリン、モスクワ、東京、ロンドンの東半分、ツーロン、キール、その他二百十八箇所の人口密集地、あるいは軍需工場地域を襲ったのであった。それぞれの都市は、赤く火を吹きあげながら燃えていたが、その火は時が来なければけっして消えることのない火であった。じつは、いまだに燃えつづけている都市も多い。火勢はつねに弱まり、騒音も減少してはいくけれども、こんにちまで、これらの爆発はつづいている。世界中のほとんど全ての国の地図に、三つか四つ、あるいはそれ以上、赤丸がついている箇所があるが、これは直径二十マイルの円をあらわすもので、おとろえていく原子爆弾の位置、人びとが立ちのきを余儀なくされた死の地域を示したものである。この赤じるしの地域で、博物館、大寺院、宮殿、図書館、傑作を陳列した美術館、その他の巨大な人間の業績が滅び去ったのであって、その黒焦げになった残骸は、いまだに地下に埋もれたままである。いつの日か、未来の世代のものが発掘して調査することもあろう。

……第四章より

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